【東大地理2021】インド、EU、日本、ロシアの1900年から2018年までの二酸化炭素排出量の推移や一次エネルギー源の特徴|第1問設問A(4)

東大地理2021第1問設問A(4)インド、EU、日本、ロシアの二酸化炭素排出量の推移と一次エネルギーの特徴 地理

2021年の東大地理第1問設問A(4)では、インド、EU、日本、ロシアの二酸化炭素排出量の推移や一次エネルギー源に関する問題が出題されました。

本記事では、各国・地域のエネルギー事情と主要な一次エネルギー源の特徴について詳しく解説します。

執 筆 者
諏訪孝明

東京大学経済学部卒
1浪・東大模試全てE判定・センター7割台の崖っぷちから世9割、日8割、数2割で文科Ⅱ類に合格。
これまでに1000人以上の受験生を指導。 
直近2年で偏差値70超の学校への合格率が90%を超えている。

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資料の読み取り

図1-4:1900年から2018年までの世界の二酸化炭素排出量の推移

記号特徴
1900年の時点ですでに二酸化炭素排出量が最も多く、近年は排出量が減少傾向。早期工業化が進んだ地域。
近年二酸化炭素排出量が急増している新興工業国。
1990年代に一時的な排出量の減少が見られる。
1960年代に排出量が大きく増加し、それ以降は横ばい。

図1-5:2016年の一次エネルギーのエネルギー源別供給量

  • a:原子力や再生可能エネルギーの割合が他の国・地域と比べて高い。
  • b:石炭を中心とするエネルギー供給。
  • c:天然ガスが主要エネルギー。
  • d:石油が主要エネルギー。

講義:一次エネルギー源と二酸化炭素排出量

国・地域ごとの一次エネルギー源と二酸化炭素排出量の特徴

EU

20世紀初頭から20世紀後半の動向

・早期の工業化
EU(特にイギリスやドイツ)は、18世紀後半の産業革命期から工業化が進み、20世紀初頭は石炭を大量に利用することで二酸化炭素排出量が世界トップでした。

・エネルギーの転換
1960年代のエネルギー革命で石炭依存から石油への転換が進みました。
その後、石油危機をきっかけに天然ガスや原子力、再生可能エネルギーなどエネルギー源の多様化が進みました。

近年の取り組みと排出量の変化

・省エネルギー政策の導入
エネルギー効率を高めるための技術革新や政策が導入され、二酸化炭素排出量が減少しました。

・再生可能エネルギーの拡大
風力発電や太陽光発電といった再生可能エネルギーへのシフトが進んでいます。
特にドイツでは再生可能エネルギーが発電の中心となりつつあります。

原子力発電へのアプローチ

・フランス
原子力発電の割合が非常に高く、エネルギー政策として引き続き新規の原発建設を進めています。
これにより、安定的なエネルギー供給と低炭素化の両立を目指しています。

・ドイツ
原発全廃を選択し、2023年に国内すべての原発の運転を終了しました。
風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーへの依存度を高めています。

インド

工業化の進展

インドは長らく工業化が遅れていましたが、人口規模は非常に大きく、潜在的な経済成長力を持つ国でした。
1991年に経済自由化政策が導入されて以降、海外資本の流入や国内産業の改革が進んで工業化が急速に進展しました。
これにより二酸化炭素排出量が増加しています。

石炭資源とエネルギー利用

・豊富な石炭資源
インド国内には豊富な石炭資源が埋蔵されており、これがエネルギー供給の中心となっています。

・石炭火力発電所
国内の発電は石炭火力発電が主流で、発電時に大量の二酸化炭素を排出しています。
これが近年のインドで二酸化炭素排出量が増加している主因となっています。

ロシア

旧ソ連の解体と経済の混乱

旧ソ連が1991年に解体され、ロシアでは社会主義から資本主義経済への移行がスムーズに進まず大きな経済的混乱が生じました。
この混乱により産業活動が停滞し、二酸化炭素排出量は一時的に低下しました。

エネルギー資源による経済復興

経済を再建するために、豊富なエネルギー資源、とりわけ天然ガスの開発が進められました。
ロシアは世界有数の天然ガス生産国となり、エネルギー輸出が経済復興の柱となりました。

特にヨーロッパ諸国への天然ガスの輸出は、ロシア経済を支える重要な収入源となっています。

エネルギー源と二酸化炭素排出量

ロシアは天然ガスを一次エネルギー供給の中心に据えており、石炭や石油に比べてクリーンな燃料である天然ガスの利用が進んでいます。
そのため、ロシアの二酸化炭素排出量は比較的安定しています。

日本

高度経済成長期(1960年代)

日本は1960年代の高度経済成長期において、大量の石油を輸入して利用することで工業生産を拡大しました。
これに伴い、二酸化炭素排出量も急激に増加しました。

この時期にエネルギー革命の影響でエネルギー源の主力が石炭から石油へとシフトしました。
石油は国内のエネルギー需要を支える中心的な役割を担いました。

石油危機と省エネルギー政策(1970年代以降)

1970年代の第1次・第2次オイルショックを契機として、石油価格の急騰や供給不安に対応するために省エネルギー政策が推進されました。

重工業中心の産業構造から省エネルギー型の工業やサービス業への転換が進み、エネルギー効率が向上しました。
これにより、二酸化炭素排出量の増加が抑制されました。

石油危機以降、エネルギーの多様化を図るために原子力発電所の建設が推進されるようになりました。
それにより、エネルギー供給に占める原子力の割合が増加しました。

東日本大震災以降(2011年以降)

2011年の福島第一原発事故以降、原子力発電所の稼働が大幅に抑制され、多くの原発が停止状態となりました。

原子力発電所の稼働停止を補うため、火力発電所における石炭や液化天然ガス(LNG)の利用が増加しました。

一次エネルギー源の特徴

一次エネルギー源とは、天然のままの物質を形を変えないで利用するエネルギーのことです。
①石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料
②太陽光・太陽熱・風力・地熱・水力・波力・潮力などの再生可能エネルギー
③原子力
の3つに分類されます。

石炭

石炭の概要
  • 石炭とは:古代のシダ植物などが地中で地熱や地圧を受けて炭化した可燃性の化石燃料。
  • 主な産出地:古期造山帯。
  • 埋蔵量:石油や天然ガスよりも多く、地域的な偏りも小さいため安定供給が可能。
特徴

石炭は化石燃料の中でも特に燃焼時の二酸化炭素排出量が多い資源であり、環境への負荷が大きいです。
石油と比べると運搬が難しく、エネルギー効率も劣ります。

石炭需要の変遷

・産業革命以降(18世紀後半以降)
産業革命期以降、石炭は世界のエネルギー消費の中心でした。

・エネルギー革命(1960年代)
エネルギー消費の中心が石炭から石油へと移行したことで石炭の需要は一時的に減少しました。

・オイルショック(1970年代)
石油価格の高騰を契機として石炭の価値が再評価され、消費量が増加しました。

主な用途
  • 火力発電:石炭は火力発電所の燃料として広く使用されている。
  • 製鉄業:鉄鉱石を還元するための酸化還元剤として利用される。
主な産出国や貿易の特徴

世界の石炭生産の75%を中国、インド、インドネシアの3カ国が占めます。

これらの国で算出される石炭の大半は国内で消費されます。

石油

石油の概要
  • 石油とは:海棲生物などの遺骸が長期間にわたり地熱や地圧を受けて分解され、可燃性の液体になったもの。
  • 石油の主成分:炭化水素。
  • 主な産出地:新期造山帯。特に中東地域に集中。
  • 石炭と比べたメリット:液体燃料であり、輸送や貯蔵が容易。エネルギー効率が高い。
石油需要の変遷

・1950~60年代:中東油田の開発
中東での油田開発が盛んになり、石油の安定供給が可能に。価格も安定し、エネルギー供給の主役となる。

・1960年代:エネルギー革命
石炭に代わって世界の主要エネルギー源となる。

・1970年代:オイルショック
二度のオイルショックを契機に、代替エネルギー(天然ガス、原子力、再生可能エネルギー)の開発が進む。

・近年
アメリカ合衆国ではシェールオイルの生産が急増し、石油の供給体制が多様化している。

主な用途

石油は、その利便性から多様な用途に活用されている。

  • 燃料用途:自動車、工場、火力発電所、暖房器具などの燃料として使用される。
  • 化学工業の原料:プラスチック、ゴム、化学繊維など、工業製品の重要な原料となる。
主な産出国と埋蔵量の分布

・中東地域
特定の地域に偏在しているのが特徴です。
世界の確認埋蔵量の約50%が西アジアに集中しています。

・主要産出国
サウジアラビア、ロシア、アメリカ合衆国などが主要産出国です。
アメリカはシェールオイルの生産拡大により産出量が急増しています。
オイルショック以降、イギリスやノルウェーなどが北海油田を開発して供給国が多角化しました。

天然ガス

天然ガスの概要
  • 天然ガスとは:炭化水素を主体とする可燃性ガス。
  • 天然ガスの主成分:メタン。
環境への影響と利点

燃焼時の環境負荷が低く、「クリーンエネルギー」として注目されています。

  • 硫黄酸化物(SOₓ)を含まないため、酸性雨の原因にならない。
  • 燃焼時に排出される二酸化炭素(CO₂)や窒素酸化物(NOₓ)の量が、石炭や石油よりも少ない。
  • 大気汚染の原因となる物質の排出が抑えられ、化石燃料の中でも環境負荷が最も小さい。

以上の特徴から、1970年代のオイルショック以降に石油の代替エネルギーとして先進国を中心に需要が急増しました。

輸送と利用

・輸送手段
天然ガスは、パイプラインでの輸送が主流です。
ただし、パイプラインが利用できない地域では液化天然ガス(LNG)として輸送されます。
液化天然ガスとは、天然ガスを-162℃に冷却し液体にしたものです。体積が約600分の1になるため、輸送効率が高いです。

主な生産国と供給の特徴

・主要生産国
アメリカ合衆国とロシアが主な生産国で、世界的な供給の中心です。
アメリカ合衆国では、シェールガス(頁岩層から採取される天然ガス)の生産が盛んです。
ロシアはヨーロッパ向けにパイプライン輸送を行い、天然ガス供給の大部分を担っています。

・供給の安定性
石油に比べて埋蔵量の地域偏在が小さく、中東への依存度が低いです。
そのため、エネルギー安全保障の観点からも重要視されています。

再生可能エネルギー

再生可能エネルギーの概要
  • 再生可能エネルギーとは:地球の自然現象のなかで繰り返し生じるエネルギーを利用するもの。
  • 太陽、風、水、地熱、バイオマスなどが含まれる。
  • 石炭や石油といった化石燃料と異なり、枯渇の心配がない。
  • 発電時に二酸化炭素をほとんど排出しないため、地球温暖化対策として注目されている。

・歴史的背景

  • 産業革命以前の人類は主に再生可能エネルギー(薪や水車など)を利用していた。
  • 近年、化石燃料依存からの脱却と環境負荷低減のため再び利用が拡大。
主な再生可能エネルギーの種類

1:風力発電

  • 仕組み:風の力で風車を回し、その回転エネルギーをタービンで電力に変換する。
  • 主な立地の特徴:年間を通して安定した風が得られる地域。
  • 具体例:偏西風帯にあるドイツ、スペイン、イギリスなどヨーロッパ諸国。
  • 課題:風が弱いと発電できないため、供給が不安定。

2:太陽光発電

  • 仕組み:太陽電池で太陽の光エネルギーを直接電力に変換する。
  • 設置場所:屋根、壁面、空き地など、日当たりの良い場所で設置可能。
  • 課題:天候や昼夜で発電量が変動する。

3:地熱発電

  • 仕組み:地下深くの高温のマグマによって熱せられた水蒸気を利用して発電する。
  • 主な立地:新期造山帯の火山地帯で発電が盛ん
  • 具体例:アメリカ、フィリピン、インドネシア、日本。
  • 課題:開発可能な地域が限られる。

4:水力発電

  • 仕組み:ダムなどで水の流れを利用し、タービンを回して電力を生成。
  • 利点:安定した電力供給が可能で大規模発電に適している。
  • 課題:大規模ダム建設は環境破壊のリスクがある。

5:バイオマスエネルギー

  • 仕組み:植物や有機廃棄物などの燃焼・分解によって得られるエネルギー。
  • 利点:燃焼時に二酸化炭素を排出するが、植生が再生時に吸収するのでカーボンニュートラルとみなされる。
再生可能エネルギーの利点
  • 環境への優しさ:化石燃料と比べて温室効果ガスの排出量が大幅に少ない。
  • 持続可能性:永続的に利用可能で、枯渇の心配がない。
  • 地域経済の活性化:地域の自然環境を活かしたエネルギー供給が可能。
再生可能エネルギーの課題

1:安定供給の難しさ

  • 天候や時間帯によって発電量が左右される(例:風が弱い、日照が不足)。
  • 発電量を調整するための蓄電技術やバックアップ電力が必要となる。

2:設備コストの高さ

  • 設備の設置・運用に高額な投資が必要。
  • 特に初期導入コストが高い。

3:地理的制約

  • 地熱発電は火山地帯、水力発電は河川が豊富な地域に限られる。
  • 風力発電も安定して風が吹く地域に限られる。

原子力

原子力発電の概要
  • 原子力発電とは:核分裂反応による熱エネルギーで蒸気を発生させ、タービンを回転させて電力を得る。
  • 燃料:主にウランが使用される。
  • 技術水準:高度な技術が求められ、主に先進国で利用されている。
原子力発電の利点

1:高効率で安定供給が可能

  • 少量の燃料(ウラン)で大量のエネルギーを供給できる。
  • 天候や季節に左右されず、安定した電力供給が可能。

2:二酸化炭素排出量が少ない

  • 燃焼工程がないため、温室効果ガスの排出がほぼゼロ。
  • 地球温暖化対策として注目されてきた。

3:資源の長期利用が可能

  • ウランは埋蔵量が比較的多く、将来的な利用継続が可能。
原子力発電の課題

1:安全性の問題

  • 事故発生時に放射性物質が環境中に放出されるリスク。
  • 代表例:1986年のチェルノブイリ原発事故、2011年の福島第一原発事故。

2:廃棄物処理の難しさ

  • 使用済み核燃料や放射性廃棄物の処理方法が確立していない。
  • 廃棄物の長期管理(数万年単位)が必要とされる。

3:建設・維持コストの高さ

  • 発電所の建設費用は非常に高額。
  • 運転終了後の廃炉費用や安全管理コストも莫大。

4:社会的・政治的反発

  • 原子力発電所の建設には住民の合意が必要。
  • 環境保護団体や市民の反対運動が多い。
世界各国の原子力利用状況

1:フランス

  • 世界有数の原子力利用国。総発電量の約7割を原子力が占める。
  • 1970年代の石油危機を受け、エネルギー自給率向上のため政府が原子力政策を推進。

2:日本

  • 1960年代以降、石油の代替エネルギーとして原子力を導入。
  • 2011年の福島第一原発事故以降、多くの原発が稼働を停止。

3:ドイツ

  • 福島第一原発事故を契機に原子力廃止政策を採用。2023年に国内すべての原発の運転を終了。
  • 再生可能エネルギー(風力・太陽光)への移行を加速。

4:アメリカ合衆国

  • 世界最大の原子力発電量を誇る。エネルギー供給の多様化の一環として原子力を利用。

解答

aーEU、bーインド、cーロシア、dー日本

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