【東大地理2022】20世紀後半における水運分布の拡大と経済性向上を支えた技術的進歩|第1問設問B(3)

東大地理2022第1問設問B(3)20世紀に水運の分布の拡大や水運の経済性を高めるために行われてきた技術的な進歩 地理

2022年の東大地理第1問設問B(2)では、「20世紀後半の水運分布の拡大や、水運の経済性を高めるために行われてきた技術的進歩の内容」を「高緯度」「等角航路」の2語を用いて3行(≒90文字)で説明する問題が出題されました。

この記事では、以下のテーマに基づいて詳しく解説します。

  • 内陸水運の利用拡大
  • 高緯度海域の利用拡大
  • 等角航路から大圏航路への転換
執 筆 者
諏訪孝明

東京大学経済学部卒
1浪・東大模試全てE判定・センター7割台の崖っぷちから世9割、日8割、数2割で文科Ⅱ類に合格。
これまでに1000人以上の受験生を指導。 
直近2年で偏差値70超の学校への合格率が90%を超えている。

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講義

1:内陸水運の利用拡大

内陸水運は、大規模貨物(穀物、鉄鉱石、石炭など)の輸送コストを削減して産業集積や地域経済の発展に寄与しています。
また、環境負荷が比較的低いので持続可能な物流の手段としても注目されています。

①北アメリカにおける内陸水運の整備
五大湖地域を中心に河川や運河の整備が進み、内陸部と沿岸部を結ぶ輸送ネットワークが発展しました。
ミシシッピ川流域やセントローレンス川を含む水運網は、大量輸送を低コストで行う手段として経済活動を支えています。

②ヨーロッパの国際河川と水路網
ライン川やドナウ川などの国際河川が運河によって接続され、ヨーロッパ全域の内陸水運が効率化されました。
このネットワークは貿易を促進し、輸送距離の短縮とコスト削減に寄与しています。

2:高緯度海域の利用拡大

①高緯度海域の特徴と航行の進展

スカンディナビア半島の北側・グリーンランド近海・北米北側などの高緯度海域は、従来は厳しい気象条件や海氷に阻まれて航行が難しい地域でした。
しかし、砕氷船やレーダー技術の発達によりこれらの地域での航行が可能となり、資源探査や物流活動が進展しています。

②北極海航路の利用拡大

北極海航路は夏季における海氷の減少によって注目を集めており、北ヨーロッパと東アジアを結ぶ新たな輸送ルートとして国際的に利用が進んでいます。
このルートは従来の航路に比べて距離と時間を大幅に短縮できる利点があります。

また、北極圏のエネルギー資源(石油・天然ガス)の開発や輸送も活発になっています。

3:大圏航路への転換

等角航路とは

等角航路は羅針盤を用いて一定の方位を保ちながら進む航路であり、特にメルカトル図法で描かれた地図上では直線で表されます。
ただし、地球の球形を考慮した最短経路(大圏航路)よりも距離が長くなる場合があります。
特に高緯度地域では、等角航路と大圏航路の距離差が顕著となります。

大圏航路への転換

大圏航路は地球上の2点間の最短距離を結ぶ航路で、正距方位図法の地図上では直線として表されます。
20世紀後半以降、人工衛星による全球測位衛星システム(GNSS)の普及により自船の正確な位置を測定し、最短経路での航行が可能となりました。

アメリカのGPSや他国の測位システムの発展により、船舶が目印のない大洋上でも自らの位置を正確に把握できるようになりました。
等角航路ではなく大圏航路に基づいた航行が現実のものとなり、航路の短縮と効率化が実現しました。
これは特に地球の曲率が大きい高緯度地域で顕著でした。
これにより、燃料消費や運航コストの削減も実現しています。

解答例

砕氷船やレーダーなどの発達で高緯度海域の利用が拡大した。舵角が一定の等角航路ではなく2点間の最短経路の大圏航路での移動がGPSの普及で可能となり、高緯度ほど距離短縮が実現した。
(88文字)

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