2023年の東大地理第3問設問B(4)では、「住宅総数が長期的に増加し、空き家率も近年上昇が著しい理由」を、「世帯規模」「地方圏」「高齢化」という語句を用いて3行(≒90文字)で説明する問題が出題されました。
この記事では、以下のポイントについて詳しく解説します。
- 大都市圏における住宅総数の増加の背景
- 地方圏における空き家の増加の要因
講義
大都市圏:住宅総数の増加
大都市圏では、人口の都市集中と社会の変化に伴って住宅総数の増加が進んできました。
その背景には、世帯規模の縮小があります。
具体的には、1世帯あたりの平均人員数が減少しており、これが新たな住宅需要を生み出しています。
世帯規模縮小の原因
①核家族の増加
- 親世代と同居せずに独立して住む世帯が増加。
- 家族構成が「夫婦と子ども」または「夫婦のみ」に変化している。
②単身世帯の増加
- 若年層の未婚化や晩婚化が進行。
- 高齢者の一人暮らしが増加し、高齢単身世帯が拡大。
③少子化
- 少子化により家族規模が小型化し、住居の小規模化が進む。
世帯数の増加と住宅総数の拡大
世帯規模の縮小により、同じ人口でもより多くの住宅が必要となります。
このため、住宅総数の増加が進行しました。
特に都市部では集合住宅や新興住宅地の開発が進められ、多様な住居ニーズに対応しています。
①集合住宅の建設
- 都市部の土地利用を効率化するため、中高層マンションやアパートが増加。
- 都心部では再開発が進み、土地の有効活用が行われた。
②新興住宅地の拡大
- 郊外エリアにおいて住宅需要を満たすために新興住宅地が開発され、住宅総数が増加。
地方圏:空き家の増加
地方圏では、人口流出と高齢化を背景に空き家が増加する現象が顕著です。
若年層が都市部へ移動する一方で、地方では住人が減少して空き家問題が深刻化しています。
若年層の流出と過疎化
地方から若年層が大都市圏へ移動する「人口流出」が進んでいます。
特に地方圏では雇用機会や教育環境を求めて若者が移住する傾向が強く、過疎化が進行しています。
若年層が都市部へ移住した後に実家へ戻らないケースが多いため、地方では空き家が増えています。
高齢化による空き家の増加
地方では高齢者の単身世帯が増加しており、高齢者のみで構成される世帯が主流となっています。
高齢者が死亡した場合や施設に入所した場合、その住居が空き家になることが一般的です。
高齢者が長期入院や施設入所をすると、その住宅は住人がいなくなります。
しかし、地方では新たな住人が転入する可能性が低いためそのまま空き家になるケースが増えています。
また、相続などで子どもなどが住宅を引き継いだ場合でも地方の物件は活用されず、管理も行き届かなくなることが多いです。
地方の住宅需要不足
都市部では空室が賃貸や売却の対象となり需要が期待できる一方で、地方ではその需要が著しく低いです。
特に過疎化が進む地域では、住宅の老朽化や地域の衰退が原因で住宅市場における価値が低く、買い手や借り手が見つからずに空き家のまま放置される傾向があります。
解答例
大都市圏を中心に核家族や単身世帯の増加による世帯規模の縮小で住宅総数が増加したが、地方圏では若年層流出と高齢化で単身世帯が増加し、住人の死亡や施設入所による空き家が増加したから。
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