2024年の東大地理第1問設問A(3)では、伝統的な遊牧生活を送るモンゴル人が乳に施す乳糖を減らすための加工について2行(約60文字)以内で説明させる問題が出題されました。
この問題を解くにあたっては、モンゴルの気候条件や遊牧生活の知識が必要です。
また、設問文をヒントとして夏場は1日の摂取カロリーの3分の1以上が乳由来である点にも注意が必要です。
この記事では以下のことについて解説します。
- モンゴルの気候の特徴
- モンゴルの遊牧生活と乳製品の加工法
この記事を通じてモンゴルの気候と遊牧生活の特徴について知識を整理しておきましょう。
是非最後までご覧ください。
講義:モンゴルの気候と暮らし
モンゴルの暮らしや食文化は、厳しい自然環境に適応しながら発展してきました。
特に、遊牧生活を中心に家畜の乳や肉を主な食料とし、モンゴル独特の気候や地理的条件に合わせた生活様式が確立されています。
以下、気候と暮らしの特徴を解説します。
モンゴルの気候特性
モンゴルは海から遠く離れた内陸奥地に位置しています。
隔海度が大きいため、気温の変動が激しいのが特徴です。
夏季は高温で、7月から8月には気温がかなり上昇します。
一方、冬季は長期間にわたり平均気温が氷点下となり非常に寒冷です。
降水量が少なく国土の大部分が乾燥しているため、農耕には向かず自然の草原を利用した遊牧が中心となります。
モンゴルの遊牧生活
モンゴルには標高約1000mの広大な草原地帯であるモンゴル高原があります。
国土の70%が牧草地であり、「草原の国」として知られています。
この環境を活かし、羊、ヤギ、馬などの家畜を放牧しながら生活する遊牧が行われています。
遊牧とは
自然の水や牧草を求めて、家畜とともに移動する牧畜の形態です。
モンゴルの遊牧民は気候に合わせて夏は川辺などの水源近くに移動し、冬は山の南側や谷の奥で北西の風を避けて生活します。
移動式住居「ゲル」
ゲルとは、遊牧生活に適した組み立て式のテントです。
木の骨組みに羊毛フェルトを張り合わせ、解体と移動が簡単にできる構造です。
これにより、季節や牧草の状況に応じて素早く移動できるようになっています。
乳と肉を基盤とした食文化
農耕が難しい気候であるモンゴルでは、家畜から得られる乳や肉が主な食料です。
特に夏場には乳が重要なカロリー源となり、乳を加工して食べる習慣が根付いています。
乳製品への加工
モンゴルの遊牧民は夏季の高温を活かして乳を発酵・加熱させ、チーズ、バター、ヨーグルト、酒(馬乳酒)などに加工します。
モンゴルの乾燥・寒冷地において、発酵食品はエネルギーや栄養を安定して供給する重要な役割を担っています。
乳をそのまま飲むのではなく発酵食品として摂取することで、乳糖を減らして消化吸収をよくすることができます。
また、乳製品に加工することで保存性も高まります。
講義まとめ
モンゴルの遊牧民は内陸性の厳しい気候に適応して、家畜の乳や肉を主な食料とする生活を発展させてきました。
特に夏季の高温を活用して乳を発酵・加工し、乳糖を減らして保存性を高めることは遊牧生活における知恵といえます。
このようにモンゴルの気候と生活様式の関連性を理解しておくと、地理の記述・論述問題においても背景知識として活用できるでしょう。
解答例
年較差の大きい気候のなかで夏の高温環境を活かして乳を加熱し発酵させてチーズなどの乳製品に加工して乳糖を減らしている。
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