【東大日本史2024】1941年から1945年にかけて小作農への収益配分が増加した政策的意図|第4問設問B解説

東大日本史2024 第4問設問B1941年から1945年にかけて小作農への収益配分が増加した政策的意図 日本史

「日中戦争勃発後の政府が小作農を保護した目的を知りたい」
「総力戦継続のために必要な政策を知りたい」

2024年の東大日本史第4問設問Bでは、1941年から1945年にかけて実現した小作農への収益配分の増加をもたらした政策的意図を3行(約90字)以内で記述する問題が出題されました。

この記事では、以下の内容について詳しく解説します。

  • 日中戦争勃発後に形成された戦時経済体制
  • 戦時経済体制下での農村

戦時体制といえば国民に我慢を強いたものというイメージが強いですが、そのなかで小作人がどのように優遇されたのかを見ていきましょう。

執 筆 者
諏訪孝明

東京大学経済学部卒
1浪・東大模試全てE判定・センター7割台の崖っぷちから世9割、日8割、数2割で文科Ⅱ類に合格。
これまでに1000人以上の受験生を指導。 
直近2年で偏差値70超の学校への合格率が90%を超えている。

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講義

戦時経済体制

1937年に日中戦争が勃発し、戦争の長期化や太平洋戦争の開戦に伴って政府は総力戦体制の構築を進めました。
1938年には国家総動員法が制定され、戦争遂行のために労働力や物資を統制・運用する権限が政府に与えられました。
この法により政府は帝国議会の承認を必要とせずに経済や国民生活を統制する力を持つこととなり、国民徴用令や価格等統制令などが実施されました。

戦時経済体制下での農村

戦争を支えるためには国民の協力が必要であり、そのためには食料増産が不可欠でした。

政府は総力戦体制を維持するために食料を確保する必要があり、地主の利益を抑制して実際に耕作を行う小作農の収益配分を増やす政策を取りました。

これにより小作農の耕作意欲を高め、食料生産を促進する狙いがありました。

図・資料の読み取り

リード文

1930年代後半から1940年代前半には(中略)地主の権利への規制が強められた。

地主の権利とは小作農から小作料を受け取ることです。
それを規制するということは、小作料を引き下げるなどして地主の利益を抑え、実際に農産物を生産している小作農の収益を増加させるということです。

図2

図2では1941年から1945年の期間を通して地主の配分率が減少し、小作農の配分率が増加していることが示されています。
これは戦時下での食料増産を目的とした政策の影響を反映しています。

資料2

小作契約を解約したり小作契約の更新を拒否したりすることはできない

資料2では小作契約の解約や更新の拒否が禁止され、小作農の耕作権が保護されていることがわかります。
これにより小作農の立場を強化し、安定した耕作が可能となりました。

資料3

米の政府買上価格の引き上げ/自作農と小作農への生産奨励金の交付

資料3からは米の政府買上価格の引き上げや自作農と小作農への生産奨励金の交付が行われていたことが読み取れます。

食料増産のため

これらの措置は食料増産を目的としたもので、小作農の耕作意欲を高める狙いがありました。

解答例

日中戦争下で総力戦を進める政府は国民の協力を得るために食料増産を図った。そのために地主の利益を抑制し、小作農の権利保護を図り、小作農の収入を増やすことで耕作意欲を高めようとした。
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