「1920年代にKKKが復活した理由が気になる」
「1924年の移民法でなぜ日本人移民が禁止されたのか知りたい」
東大は2020年入試の世界史で1920年代のアメリカ合衆国で活発化した移民や黒人に対する排斥運動やそれに関わる政策の概要を3行(≒90字)以内で記述させる問題を出題しました。
そこで、この記事では以下のことについて解説しています。
- 1920年代のアメリカ合衆国で黒人や移民への差別意識が高まった背景
- 1920年代のアメリカ合衆国で社会が保守化したことにより起きた出来事や制定された法律
1920年代のアメリカ合衆国といえば経済の繁栄や大衆文化の成立が注目されがちです。
社会の保守化について背景・経緯からしっかり学ぶ機会はなかなかありませんので、是非この記事を最後までご覧ください。
講義
1910年代(第一次世界大戦中)
欧州を主戦場とする第一次世界大戦によって、アメリカ合衆国では欧州向けの工業製品の輸出が増加しました。
これにより、アメリカ合衆国の北部工業地帯では
- 工業化が進展する
- 労働力が不足する
という事態に直面しました。
そして、労働力不足を解消するために南部の黒人が北部へ移住するケースが増加しました。
北部の白人中産階級(ワスプ・WASP)はこうした社会の変革に反発し、自分たちとは異なる思想・民族・人種への偏見や差別を強めました。
WASP(ワスプ)とはホワイト(白人)・アングロ=サクソン系・プロテスタントの頭文字をとったものです。
これでない人々への偏見・差別を強めたということは、差別対象が黒人(人種が異なる)、ユダヤ人(ユダヤ教を信仰)、アジア系移民(人種が異なる)、東欧・南欧系の移民(主にカトリックを信仰)など多岐にわたったということを意味しています。
1920年代
社会の保守化
ワスプが保守化したことで、伝統的な白人社会の価値観を尊重する風潮が広まりました。
そして、 黒人、アジア系移民、東欧・南欧系の移民などへの差別意識が強まりました。
KKKの復活
アメリカ社会全体に流れる外国人排除の風潮に乗じてクー=クラックス=クラン(KKK)が復活し、活動が活発化しました。
彼らは白人至上主義に基づいて黒人などの非白人を迫害しました。
禁酒法
禁酒法とは、酒類の製造・販売・流通を禁止した法律です。
この法律は「『禁酒』というキリスト教的道徳を守ろう」という保守派の主張により制定されました。
サッコ・ヴァンゼッティ事件
サッコ・ヴァンゼッティ事件とは、イタリア系移民のサッコとヴァンゼッティを証拠不十分のまま殺人事件の犯人として死刑執行を強行した事件です。
南欧系をはじめとする移民に対して差別意識が強まっていることを象徴する事件とされています。
また、サッコとヴァンゼッティは無政府主義者であったためこの事件は社会主義や左翼への弾圧が強まっていたことを象徴しているという面もあります。
移民法(1924年)
移民に対する反発の強まりを背景として移民法が制定されました。
この法律では、以下のことが定められました。
- 東欧・南欧からの移民数を制限する
- アジア系移民を全面禁止する
なお、中国系の移民は1882年の移民法で既に禁止されていました。
よって、このとき禁止された「アジア系移民」とは日本人移民のことでした。
そこで、1924年の移民法を「排日移民法」と呼ぶこともあります。
答案作成
字数を気にせず書いてみる
ワスプの間で人種差別や移民差別の風潮が高まり、白人至上主義のKKKが復活して黒人などを迫害した。1924年の移民法では東欧・南欧からの移民数を制限しアジア系移民を全面禁止した。
88字です。
3行問題ですのでちょうどいいですね。
今回はこれを解答例とします。