2023年の東大地理第3問設問A(1)(2)では、与えられた地形図から地形や土地被覆を読み取る問題が出題されました。
この問題を解くためには、地形の特徴を理解することが求められます。
この記事では、以下のポイントについて詳しく解説します。
- 地形図の読み取り
- 扇状地の成り立ちと特徴
- 尾根と谷の区別
- 針葉樹林
- 荒地
資料の読み取り:図3-1地形図
鉄道より北西側の住宅地域
地形図には、谷口と平地の境界付近に位置する住宅地域が描かれています。
この地域は、地図中のAやBの谷口から南東に広がる緩やかな傾斜地となっています。
この地形の特徴は、扇状地と一致します。
扇状地と判断した根拠:住宅地が谷口から緩やかな傾斜地にかけて広がっている。
山地とその土地被覆
土地被覆については、
【東大地理2024】ヨーロッパとオーストラリアの標高500m以下の土地利用・土地被覆の特徴と相違の理由|第2問設問A(4)
にて解説しております。
是非そちらもご覧ください。
北西部の山地には、針葉樹林と荒地が地図記号で示されています。
これらの土地被覆の分布は、地形の特徴(尾根や谷)と密接に関連しています。
針葉樹林
針葉樹林の地図記号は、等高線が高い方から低い方に向かって突き出した「尾根」に沿って多く見られます。
尾根は水が流れにくく土壌が安定しているため、森林の発達に適した場所です。
荒地
荒地の記号は、等高線が低い方から高い方に向かって突き出した「谷」に沿って見られます。
谷は雨水が集中して浸食が進みやすい地形であり、土壌の流出や植生の発育が阻害されやすいため荒地となることが多いです。
講義:地形や土地被覆
1:扇状地
扇状地の形成プロセス
扇状地は、山地から流れる河川が平野部に出る際に形成される地形です。
山地を流れる河川は急勾配によって浸食力が強く、大量の土砂を運搬します。
しかし、平野に出ると勾配が緩くなるため流速が低下して運搬力を失った河川が土砂を堆積させます。
これにより、粒子の大きな砂礫が堆積して扇状地が形成されます。
また、河川の流路は洪水のたびに左右へ変化し、土砂が広範囲にわたって堆積することも扇状地の特徴です。
この堆積によって、谷口を頂点に扇形または半円状に広がる地形が生まれます。
扇状地の構造と土地利用
①扇頂
扇状地の最上部にあたる地域で、谷口に位置します。
勾配が大きいため流速が速く、土砂が堆積しやすい地域です。
このため、急流による土石流災害のリスクが高く、大規模な集落が形成されにくいですが、峠越えの交通の要所となることがあります。
水が豊富であるため、谷口集落や水田が形成されることもあります。
②扇央
扇状地の中央部分であり、粒子の大きな砂礫層が多く透水性が高い地域です。
そのため、河川の水が地中に浸透して伏流となり、水無川が見られることがあります。
土地利用は、かつては畑や果樹園などが中心でした。
しかし、現代では上水道の整備やポンプの利用により、新興住宅地として開発される例が増えています。
③扇端
扇状地の末端に位置し、地下に浸透した水が湧水として地表に現れる地域です。
この湧水帯は水資源が豊富であるため、古くから集落が発達し、扇端から平野部にかけては水田が広がることが多いです。
集落が湧水帯に沿って列状に形成されることが多いのも特徴です。
②尾根と谷
尾根
尾根は山頂から山麓に向かって高い部分が伸びた地形で、山の稜線部分を指します。
等高線が標高の高い方から低い方に凸(張り出し)となる部分が尾根です。
尾根は雨水が分かれる地点となり、山の分水界としての役割を果たします。
人間の手に例えると、指そのものが尾根に相当します。
谷
谷は尾根と尾根の間に位置し、山麓から山頂に向かって深く切れ込んだ低地部分です。
雨水は谷に集まり、そこを流れる河川の侵食によってさらに深くなります。
等高線が標高の低い方から高い方に凸(食い込み)となる部分が谷です。
手にたとえると、指の間が谷に相当します。
谷は雨水や融雪水が集まる場所としての役割を持ちます。
尾根と谷の見分け方
尾根と谷を地図上で見分ける際には、以下の手順を踏むと効果的です。
1:山頂の位置を確認
地図上で標高の高い場所を見つけます。
2:等高線の形状を確認
標高が高い方から低い方に凸となっている部分を尾根、低い方から高い方に凸となっている部分を谷と判断します。
3:水の流れを考える
雨水は尾根から谷に向かって流れ、最終的に谷底に集まります。
この水の流れを意識すると、地形の理解がさらに深まります。
③針葉樹林
針葉樹林は、針状の細い葉を持つスギやマツ、または小さな鱗片状の葉を持つヒノキ類などの針葉樹で構成される森林を指します。
これらの樹木はカラマツ類を除き、ほとんどが常緑樹であるため、年間を通して緑を保つ特徴があります。
針葉樹林は地球上の多様な気候帯に分布していますが、特に温帯北部から亜寒帯にかけての広い地域を占めています。
日本における針葉樹林
針葉樹は一般に生長が早く、人工林として利用されやすい特性があります。
日本の森林面積の約40%を針葉樹が占めており、その多くが人工林です。
これには、スギやヒノキなどが多く含まれ、建築材や製材として重要な資源となっています。
人工林の背景
戦後、日本では木材需要が増加したため、経済成長期にスギやヒノキが大規模に植林されました。
これにより、天然林の代わりに人工林が広がり、現代の日本の森林の主要構成要素となっています。
人工林の課題
スギやヒノキの人工林は管理が行き届かないと森林の荒廃を招きます。
また、花粉症の原因となるスギ花粉の問題も社会的な課題となっています。
そして、針葉樹林はほとんどが常緑樹であるため落葉による腐葉土形成が少なく保水力や土砂止効果が低い。
④荒地
荒地とは、自然的・人為的な要因により利用が進まず、荒れ果てた状態にある土地を指します。
荒地の形成要因
自然的要因
①気候条件
極端な乾燥(砂漠化)や過剰な湿潤(沼地化)が原因となる場合があります。
特に、降水量が不足して植生が育たない地域では荒地化が進みます。
②地形条件
山岳地帯や急斜面では土壌の浸食が進みやすく、土地が利用不適となることがあります。
③災害の影響
土石流や洪水の影響で土地が荒廃することがあります。
人為的要因
①過剰利用
過度な耕作や放牧が行われると、地力が低下し土地が荒廃します。
特に、乾燥地帯では砂漠化を招くことがあります。
②過疎化や人口減少
人口が減少することで土地利用が進まず、放置された土地が荒地となることがあります。
③森林伐採
森林伐採後の土地がそのまま放置されると、土壌流出が進み荒地化する場合があります。
解答例
(1)
扇状地
(2)
尾根に針葉樹林が広がり、一部の谷には荒地がみられる。
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