2022年の東大地理第3問設問A(4)では、「情報通信技術」「新規創業」「高齢化社会」の3語を用いて「スマートシティ」の特徴を3行(≒90字)で説明する問題が出題されました。
この記事では、以下の「スマート〇〇」という用語の意味ついて解説するとともにスマートシティの取り組みと新たな街づくりについて詳しく解説します。
- 「スマートフォン」
- 「スマートアグリ」
- 「スマートグリッド」
- 「スマートハウス」
- 「スマートシティ」
資料の読み取り:図3-2地形図
図3-2の地形図では、地区②に大学のキャンパスや研究所が見られます。
これにより、地区②がスマートシティの実現に向けた研究や技術開発の拠点となっていることが読み取れます。
大学や研究機関は新技術の研究開発拠点であり、産学官が連携して新規創業(ベンチャー企業の育成) を支援している可能性が高いです。
特に、スマートシティ実現に向けて情報通信技術(ICT)や再生可能エネルギー、人工知能(AI)を活用した技術が研究されていると考えられます。
講義:地理の「スマート〇〇」
スマート化とは
ICT(情報通信技術)やAI(人工知能)を活用し、各種の装置やシステムが状況に応じて最適な制御や処理を自動的に行うことを指します。
これにより人間が指示をしなくても、効率的かつ快適な状態が自動で維持されます。
以下に、代表的な「スマート〇〇」の事例を解説します。
0:スマートフォン
概要
パソコンの機能をコンパクトにまとめ、 携帯性 と 多機能性 を両立させた情報通信機器です。
特徴
- 通話機能に加え、ウェブ閲覧、電子メールの送受信、文書作成や閲覧、音声や映像の撮影・再生が可能。
- アプリケーションの追加によって機能を自由に拡張できる。
- インターネットとの親和性が高く、オンライン決済などの 生活インフラとして利用される。
利点
- 情報収集やコミュニケーションの効率化。
1:スマートアグリ(スマート農業)
概要
「スマートアグリ」とは ICT(情報通信技術) や AI(人工知能) を活用し、農業の作業を 効率化・自動化 する農業システムのことです。
労働力不足や収穫効率向上、環境への配慮を目的とし、従来の農業からの進化を目指しています。
特徴
①ハウス栽培の自動管理
- コンピュータを活用し、温度・湿度・光合成に必要な 二酸化炭素濃度 を24時間集中管理。
- 水やりも自動化され、人工繊維に養分を加えた水を供給するシステムが導入されている。
②ドローンの活用
- 農薬散布の自動化により、人手の削減と効率化が可能。
- ドローンに搭載したセンサーが農作物の健康状態を把握し、適切な散布量を提案する。
③AI・ビッグデータ活用
- 農地の状況や天候データをAIが解析し、作物に最適な栽培計画を提案する。
- 生産予測や病害虫対策もデータに基づいて高度化される。
利点
①労働力不足の解消
- 自動化により作業が省力化され、農業従事者の負担が軽減される。
- 特に高齢化が進む地域で有効。
②生産性の向上
- 科学的データに基づく管理で、作物の品質や収量が安定する。
③環境への配慮
- 過剰な農薬や水の使用を抑え、 持続可能な農業 を実現する。
世界の事例:オランダ
オランダは「スマートアグリ」の先進国として知られ、ICTやAIを駆使した高度なハウス栽培を展開しています。
生産性を最大限に高めた大規模農業が進んでおり、生産システムを他国へ輸出することを目指しています。
2:スマートグリッド
概要
「スマートグリッド」とは、ICT(情報通信技術)を活用して電力の需要と供給を最適に管理する次世代型の送電網 です。
従来の電力供給システムに加えて再生可能エネルギー を導入し、小規模分散型でエネルギーの自給自足を目指すシステムです。
特徴
①再生可能エネルギーの活用
- 太陽光発電 や 風力発電 などの再生可能エネルギーを地域単位で導入。
- エネルギーの地産地消を促進し、持続可能なエネルギー供給を実現する。
②小規模分散型電力供給
従来の大型発電所からの一方的な送電ではなく、 家庭や地域が小規模な発電・蓄電設備を持ち、それを送電網で結ぶ仕組みです。
③ICTを活用した制御
- 電力需要と供給 のバランスをリアルタイムで管理し、電力の無駄を最小限に抑える。
- 供給側(発電)と需要側(消費)を効率的に結びつけることで、電力ロスを削減する。
④電気自動車(EV)との連携
- 電気自動車を「移動式蓄電池」として活用し、電力を蓄電・供給する。
- 停電時には電気自動車から家庭へ給電するシステムも導入されている。
利点
①エネルギー効率の向上
電力供給の最適化により、発電・送電ロスが削減されます。
②環境への配慮
再生可能エネルギーの導入により二酸化炭素排出量を削減し、低炭素社会の実現に貢献します。
③停電・災害時のリスク分散
小規模分散型の電力供給により、災害時の停電リスクを軽減します。
④電力の地産地消
地域単位でエネルギーを自給することで、エネルギーの地産地消を実現します。
3:スマートハウス
概要
「スマートハウス」とは、再生可能エネルギー と ICT(情報通信技術) を活用して家庭内のエネルギー効率を最適化する省エネ住宅のことです。
エネルギー消費を自動制御し、二酸化炭素排出を削減することで持続可能な社会の実現を目指します。
特徴
①エネルギーの自給自足
- 太陽光発電や風力発電を導入し、家庭内でエネルギーを生産する。
- 蓄電池を併用して発電した電力を効率的に蓄え、必要なときに使用する。
②HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)
- ICTを活用し、エネルギーの消費状況をリアルタイムで把握し、自動的に制御します。
- 照明、エアコン、冷蔵庫などの家電製品を効率的に運転することで、無駄なエネルギー消費を削減します。
③環境配慮型の住宅設計
- 高断熱・高気密の構造を採用し、冷暖房効率を向上させます。
- 風力や太陽光を自然エネルギーとして最大限活用し、二酸化炭素排出量を削減します。
④電気自動車(EV)との連携
電気自動車を「移動可能な蓄電池」として活用し、夜間や停電時に家庭へ給電するシステムを構築します。
利点
①エネルギーコストの削減
自家発電・蓄電を行うことで、電力会社への依存を減らし、光熱費を大幅に削減できます。
②災害時の電力供給
太陽光発電や蓄電池を利用し、停電時でも家庭内の電力を確保できます。
③地球環境への貢献
二酸化炭素排出量を削減し、低炭素社会の実現に貢献します。
④快適な生活環境
HEMSにより家電製品を効率よく制御し、家庭内の温度や湿度を快適に保ちます。
4:スマートシティ
「スマートシティ」 とは、情報通信技術(ICT)や人工知能(AI) などの先端技術を活用して都市全体の課題を解決しつつ、効率的な運営と住民の利便性向上を目指す都市のことです。
特に 再生可能エネルギー の利用や持続可能な成長が重視されています。
特徴
①ICTやAIを活用した効率的な都市運営
- 都市のエネルギー供給や交通インフラをリアルタイムで管理し、効率的な運営を行う。
- ビッグデータ を活用し、人や物の流れや消費行動を分析して最適化する。
②再生可能エネルギーの導入
- スマートグリッド(ICTを活用した電力供給網)を構築し、分散型の電力供給を行う。
- 太陽光発電や風力発電など、再生可能エネルギーを都市レベルで地産地消することで低炭素社会を実現する。
③高齢化社会への対応
- 自動運転技術やAIを活用した交通システムにより、高齢者の移動を支援する。
- 買い物難民や医療・介護問題 の解決に向け、遠隔医療や無人サービスの導入を進める。
④新規創業の促進
- 産学官連携により大学や研究機関が新規技術を開発し、新規創業(スタートアップ)を促進する。
- 大学発ベンチャーが技術革新をリードし、高付加価値の都市サービスを創出する。
解答例
情報通信技術を活用し、大学発ベンチャーなど新規創業の企業を中心に開発した新システムなどを活用して再生可能エネルギーの利用促進や自動運転技術などによる高齢化社会での課題解決をする。(89文字)