【東大地理2021】首都圏で1970年代以降に合計特殊出生率が他の地方と比べて大幅に低下した理由|第3問設問B(4)

東大地理2021第3問設問B(4)首都圏で1970年代以降に合計特殊出生率が他の地方と比べて大幅に低下した理由 東大地理

2021年の東大地理第3問B(4)では、日本の首都圏において1970年代以降、合計特殊出生率が他の地方と比較して大幅に低下した理由が問われました。
この設問では、合計特殊出生率という指標が示すものを正しく理解するとともに、首都圏特有の社会経済的な背景や少子化の進行要因を把握することが求められました。
本記事では、合計特殊出生率の定義や仕組みを解説し、首都圏での低下が顕著な理由について詳しく掘り下げていきます。

執 筆 者
諏訪孝明

東京大学経済学部卒
1浪・東大模試全てE判定・センター7割台の崖っぷちから世9割、日8割、数2割で文科Ⅱ類に合格。
これまでに1000人以上の受験生を指導。 
直近2年で偏差値70超の学校への合格率が90%を超えている。

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講義:首都圏の出生率と合計特殊出生率

出生率と合計特殊出生率

出生率とは

出生率は、一定期間内における人口1,000人あたりの出生数を示す指標です。
地域ごとの人口動態を把握するために用いられ、人口増減の傾向を測る基礎的なデータとして重要です。
ただし、出生率は地域の人口構成に影響を受けるため、年齢別の分析には限界があります。

合計特殊出生率とは

合計特殊出生率とは15歳から49歳までの女性の年齢別出生率を合計した値で、1人の女性が生涯に産む子どもの平均人数を表します。

この数値は人口構成の影響を受けないため、出生動向をより客観的に示す指標として活用されています。

人口の維持には約2.07~2.08が必要ですが、日本の首都圏はこれを大きく下回っており、少子化の進行が顕著です。

高度経済成長期の出生率や合計特殊出生率

出生率が高かった理由

高度経済成長期には、地方の農村部から首都圏への人口流入が活発でした。
この移動により、首都圏では若年層(特に出産・子育ての適齢世代)の人口が増加しました。
特に出産適齢期の女性が増えたことで、首都圏の結婚や出産が促進され、結果として出生率が高くなりました。

合計特殊出生率が高かった理由

当時の日本では女性の社会進出が十分には進んでおらず、結婚後の女性はキャリアアップよりも専業主婦として家事や育児に専念する傾向が強く見られました。
この背景には、専業主婦が一般的なライフスタイルとされ、女性の役割が家庭内に限定されていた価値観がありました。
このような社会環境により、専業主婦率が高く、合計特殊出生率も高い水準を維持していました。

また、当時の社会では家族単位での生活が重視され、子どもを持つことが一般的な価値観とされていたため、結婚した夫婦が複数の子どもを持つことが多かった点も出生率や合計特殊出生率を押し上げる要因となりました。

1970年代以降の合計特殊出生率

1970年代以降、首都圏の合計特殊出生率は他の地方と比較して大幅に低下しました。
その背景には、女性の社会進出や価値観の多様化、経済的要因、育児環境の整備不足といった複合的な要因が存在しています。
以下に、主な要因を整理して解説します。

①結婚や家族に対する価値観の多様化

1970年代以降、女性の高学歴化や社会進出が進んだことで結婚や家族に対する価値観が多様化しました。
これにより、結婚をしない生き方や子どもを持たない選択肢が社会的に受け入れられるようになり、非婚化が顕著になっています。
また、結婚する女性の中でも晩婚化が進み、結婚年齢の上昇が出産時期の遅れ(晩産化)にもつながって、結果的に出生数が減少する要因となりました。

これらの変化の背景には女性のキャリア志向の高まりやライフスタイルの多様化があり、従来の「女性の幸せ=結婚・出産」「結婚=出産」という価値観が薄れていったことを示しています。

②子育て費用の負担増

高等教育の普及や進学率の上昇により、子どもを育てるための費用が大幅に増加しました。
特に教育費が高額化したことで家庭の経済的負担が大きくなり、多くの家庭が子どもの人数を抑える選択をするようになりました。
また、豊かな生活水準を維持するためにあえて子どもを持たないという選択をする夫婦も増加しています。

これらの要因が既婚女性の出産数の減少を招き、合計特殊出生率の低下に寄与しています。
経済的負担の増加が家族計画に大きな影響を与え、首都圏では特にその傾向が顕著です。

③育児と仕事の両立が困難

女性の社会進出が進む中で、育児と仕事を両立するための社会的支援が十分に整っていないことが首都圏における合計特殊出生率の低下を招く一因となっています。
特に、育児休暇制度や託児所の整備、保育施設の充足といった育児支援インフラが不十分であり、待機児童問題も深刻です。

また、核家族化の進展が育児環境をさらに厳しいものにしています。
親族によるサポートを受けられないケースが多く、育児の負担が母親に集中しやすい状況が続いています。

こうした状況下では女性は仕事と育児を両立させることが難しく、出産や子育てを選択しにくい環境が生まれています。
この結果、出産を控えたり、出産後に職場を離れる女性が増え、家庭の収入やライフプランにも影響が出ています。これらの要因が、出生数の減少と合計特殊出生率の低下に直結しています。

解答例

結婚後の女性が専業主婦として家事・育児に専念する傾向が強かったが、1970年代以降は女性の社会進出により非婚化が進み、子育て費用高額化や保育施設不足などで既婚女性の出産数も低下した。(89文字。「1970」は2文字扱い。)

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