【東大地理2020】ドイツの多くの地域で、2000年代と比べて2010年代に人口増加率が上昇した要因(と移民・難民問題)|第3問設問A(4)

東大地理2020第3問設問A(4)ドイツの多くの地域で、2000年代と比べて2010年代に人口増加率が上昇した要因 東大地理

2020年の東大地理第3問A(4)では、ドイツの多くの地域で2000年代と比べて2010年代に人口増加率が上昇した要因を問う問題が出題されました。
この問題では、ドイツにおける移民・難民の受け入れが人口動態に与えた影響について考察することが求められました。
本記事では、2010年代のドイツにおける人口増加の背景と、その要因を詳しく解説します。

執 筆 者
諏訪孝明

東京大学経済学部卒
1浪・東大模試全てE判定・センター7割台の崖っぷちから世9割、日8割、数2割で文科Ⅱ類に合格。
これまでに1000人以上の受験生を指導。 
直近2年で偏差値70超の学校への合格率が90%を超えている。

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講義:2010年代のドイツにおける人口増加要因

人口増加要因の考察における思考プロセス

特定の国・地域の人口増加要因を考察する際には、自然増加要因(出生数が死亡数を上回ることによる増加)と社会増加要因(転入数が転出数を上回ることによる増加)の両面を検討する必要があります。
しかし、ドイツは少子高齢化が進んでいる先進国であり多産社会ではないため、自然増加による人口増加はほとんど期待できません。
そのため、増加要因として社会増加要因、すなわち移民や難民の受け入れに注目する必要があります。
特に、2010年代にはEU内外からの労働者や移民が多数流入し、ドイツの人口増加を支えました。

2010年代のドイツと移民・難民

中東欧諸国からの移民の増加

2010年代のドイツでは、EUの拡大に伴って中東欧諸国からの労働移民が急増しました。
ポーランド、ルーマニア、ハンガリー、ブルガリアなどの新規加盟国からの移民は賃金水準の高い雇用機会を求めてドイツへ移住し、製造業や建設業、農業など労働力を必要とする分野で活躍しました。

中東やアフリカからの難民の増加

シリア、アフガニスタン、イラクなど中東の紛争や内戦地域からの難民がドイツへ流入しました。
これらの難民は、宗教的・政治的迫害や戦争による生命の危機から逃れ、安全を求めて他国に避難した人々です。

移民・難民受け入れの背景

シェンゲン協定による自由な移動

EU内ではシェンゲン協定によって国境を超えた移動が自由化されており、これが労働移民や難民の移動を後押ししました。
ドイツは欧州最大の経済大国であり、就業機会の多さや生活水準の高さから、移民や難民にとって最も魅力的な目的地の一つとなりました。
これにより、ドイツでは人口減少が続いていた地域でも人口が増加に転じたり、減少率が低下する変化が見られるようになりました。

ドイツにおける歴史的背景

ドイツでは、経済成長を遂げた1960年代において不足する労働力を補うためにトルコやイタリアなどから多くの外国人労働者を受け入れました。
この時期、西ドイツ政府は労働協定を各国と締結して移民の受け入れを積極的に進めました。
特にトルコ人が最多で、次いでポーランド人が多くなっています。
また、東西統一後は東欧諸国からの移民が急増し、ドイツの労働市場を支える重要な存在となりました。
このような移民政策は、ドイツの産業発展に寄与するとともに多文化社会形成の基盤にもなりました。

移民・難民問題

移民・難民問題は、ドイツにおける社会的・経済的な課題として注目されています。
石油危機以降の経済停滞により国内失業率が増加したことで、一部のドイツ人は外国人労働者が就業機会を奪っていると感じ、外国人排斥が社会問題として浮上しました。

さらに、宗教の違いが問題を複雑化させています。
ドイツ人の多くがキリスト教徒であるのに対して移民の多くはイスラーム教徒であり、この宗教的な違いが軋轢を生む要因となっています。
一部のドイツ人は移民を生活を脅かす存在とみなし、移民排斥を訴える動きが見られます。
また、移民の高い失業率が社会不安を助長し、暴動が発生することもあります。

このような背景から、ドイツ政府は移民政策の見直しを進めています。
特に非熟練労働者の受け入れを制限する方向に舵を切っています。

移民・難民問題は単なる経済的な課題にとどまらず、宗教や文化の違いが絡む複雑な問題であり、ドイツ社会にとって解決が求められる重要なテーマとなっています。

解答例

中東欧諸国のEU加盟や中東での内戦で移民や難民が増加した。(29文字)

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