2020年の東大地理第3問A(2)では、1990年から2000年のドイツにおける人口増減率の地域差の特徴と要因を説明する問題が出題されました。
この期間は東西ドイツ統一後の社会的・経済的変化が顕著に現れた時期であり、統一に伴う経済格差や人口移動が地域ごとの人口増減率に大きな影響を与えました。
本記事では旧東ドイツと旧西ドイツそれぞれの地域における人口動態の違いと、その背後にある要因について詳しく解説します。
講義:1990年~2000年のドイツにおける人口増減率の地域差
東西ドイツの統一と人口移動の背景
1989年にベルリンの壁が崩壊し、翌1990年に東西ドイツが再統一されて現在のドイツが誕生しました。
この統一は、社会主義国だった旧東ドイツ(ドイツ民主共和国)が資本主義国の旧西ドイツ(ドイツ連邦共和国)に吸収される形で実現しました。
しかし、この急速な統一は東西間での経済・社会的な格差を浮き彫りにしました。
この結果、旧東ドイツから旧西ドイツへの大規模な人口移動が発生しました。
旧東ドイツ地域の人口減少
旧東ドイツ地域では、1990年の統一後に顕著な人口減少が見られました。
この背景には、市場経済への急速な移行がありました。
旧国営企業の民営化が進むなかで倒産が相次ぎ、多くの労働者が職を失って生活水準の向上が見込めない状況が続きました。
その結果、より良い就業機会や生活環境を求めて若年労働力を中心とした人口流出が進み、旧東ドイツ地域では人口減少が著しいものとなりました。
旧西ドイツ地域の人口増加
旧西ドイツ地域では、1990年の統一後に顕著な人口増加が見られました。
この増加の主な要因は、旧東ドイツからの人口流入です。
旧西ドイツは経済が発展しており、高い生活水準や豊富な就業機会があったため移住先として選ばれることが多く、特に工業地域が移住者の受け入れ先となりました。
解答例
東西ドイツ統一後、旧東ドイツの州では失業が増加して人口が減少し、就業機会が豊富で高賃金の旧西ドイツの州では増加した。(58文字)