2020年の東大地理第1問B(2)では、高知県と香川県が水資源をやりとりする理由について問われました。
この問題では、地理的条件や社会的背景に基づき、高知県から香川県に水資源が供給される理由を水資源の供給と消費の両面から説明することが求められました。
本記事では、この水資源のやりとりが生じる背景について詳しく解説します。
講義:高知県と香川県で水資源をやりとりする理由
水資源の供給
高知県
高知県は四国山地を背に太平洋側に面しており、夏季には南東季節風が吹き込むため多雨な気候が特徴です。
湿った南東季節風が四国山地に衝突して上昇気流を生じ、地形性降雨をもたらします。
この影響で、高知県では降水量が多く水資源が豊富です。
また、台風の影響を受けやすいことも夏季の降水量を増加させる要因となっています。
香川県
香川県は中国山地と四国山地に挟まれた瀬戸内地方に位置し、これらの山地が季節風を遮るため年中少雨です。
夏季は南東季節風が四国山地に遮られ、冬季は北西季節風が中国山地に遮られるため降水量が少なく、晴天が多いのが特徴です。
また、讃岐平野には大きな河川が存在せず、広範囲に水を供給することが難しいため農業用水を確保するために古くから多くのため池が造成されてきました。
しかし、これだけでは水需要を賄いきれず、現在では高知県にある吉野川上流から香川用水を引き、水資源を確保しています。
まとめ・補足解説
高知県の夏の多雨な気候による水資源の豊富さと香川県の少雨な気候による水資源不足を対比すると、水供給の地理的格差が明確になります。
高知県では多雨の恩恵を受け、河川の水量も豊富であるため、香川県に水を供給できる余裕があります。
一方で、香川県は少雨に加え、大きな河川が存在しないため、ため池の利用や他県からの水供給に頼らざるを得ない状況です。
これらの条件が、両県間の水資源のやりとりを生み出しています。
水資源の消費
水資源の消費には、農業用水、工業用水、生活用水の3つが挙げられます。
香川県
香川県は、高知県よりも人口が多く、用水の消費量が高知県を大きく上回ります。
瀬戸内工業地域の一部を担う香川県では、工業用水の需要も大きいです。
また、県庁所在地の高松市は四国の中核都市として行政機関や全国企業の支店・支社が多く集積しているため、産業が発達していることも水資源の消費量が多い理由となります。
高知県
一方、高知県は人口規模が小さく、水資源の消費量も少ないため余剰となる水資源を香川県へ供給することが可能です。
このような人口密度や産業規模の違いが、両県の水資源やりとりの背景となっています。
解答例
水資源。高知県は太平洋側にあり季節風の影響で夏の降水量が多く、香川県では季節風が山地にさえぎられ年中少雨だが香川県のほうが人口が多く産業も発達していて水資源の消費量が多いから。(88文字)