2020年の東大地理第1問A(1)では、中国山地と四国山地の地形的特徴の違いやそれを生じさせた理由について「内的営力」「外的営力」という語句を用いて説明する問題が出題されました。
本記事では、まず営力の定義を整理し、そのうえで中国山地と四国山地の地形的特徴とその違いが生じた背景について詳しく解説します。
講義
営力とは
営力とは、地表の形態、つまり地形を変化させる力を指します。
この営力には、地球内部から働いて地形を形成する内的営力と、地球外部から作用して地形を削ったり平坦化したりする外的営力の2種類があります。
それぞれの役割と特徴を以下に詳しく解説します。
内的営力とは
内的営力とは、地球内部のエネルギーに起因して地形を変化させる力を指します。
この営力は、主に地殻変動や火山活動によって発生し、地形の起伏を大きくする働きを持ちます。
内的営力は、山脈や高地、大地形を形成する要因となります。
特徴
①エネルギーの源:地球内部の熱エネルギーに由来します。
②作用の方向:地形を隆起させたり沈降させたりして、地表に起伏を生じさせます。
③主なプロセス:地殻変動と火山活動。
内的営力の種類
①地殻変動
地殻変動は地球内部の力が地表に作用し、地形を隆起または沈降させる現象です。
地殻変動には以下の2種類があります。
- 造陸運動:広範囲にわたり、ゆるやかな隆起や沈降を引き起こす現象。
- 造山運動:狭い地域で褶曲(地層の曲がり)や断層(地層の割れ目)を伴い、急激に山地や山脈を形成する現象。
②火山活動
火山活動は、地中のマグマが地表に噴出することで火山地形を形成します。
この過程には、溶岩流や火山噴火、地熱活動などが含まれます。
内的営力の影響
内的営力は、主に次のような形で地形を変化させます。
- 山脈や高地の形成。
- 火山地形(火山体や火山湖)の生成。
- 地表の断層や褶曲による複雑な地形の出現。
内的営力と大地形
内的営力は、主に大地形(山脈、大陸、海洋底)を形成する役割を担います。
この力が働くことで、地球の地形はダイナミックに変化し続けています。
例として、日本の四国山地は、プレートの沈み込みによる造山運動(内的営力)の結果、大きく隆起した険しい地形を持っています。
このように、内的営力が地形形成に与える影響は非常に大きいものです。
外的営力とは
外的営力とは、主に太陽エネルギーを源として地球外部から地形に働きかける力を指します。
この営力は地形を削ったり、削った物質を移動させたり、堆積させたりすることで、地表を平坦に近づける方向に作用します。
具体的には、風、流水、氷河、波などの自然現象がこの力を生み出しています。
特徴
①エネルギーの源:太陽エネルギーや地球の重力が主なエネルギー源となり、大気や水の動きが地形を変化させます。
②地形への影響:地形を削り取る(侵食)、削られた物質を移動させる(運搬)、その物質を積み重ねる(堆積)ことで、最終的に地形を平坦化させます。
③作用の規模:小地形(V字谷、扇状地、三角州など)を形成し、内的営力で生じた大地形を削り整える働きがあります。
外的営力の種類
①風化作用
太陽、雨、水、大気、生物などによって、岩石が物理的・化学的に分解される現象。
- 物理的風化:温度変化や凍結・融解による岩石の破砕。
- 化学的風化:雨水に含まれる酸によって鉱物が溶解。
②浸食作用
地形が削り取られる現象。
侵食には以下の種類があります。
- 河食:流水による侵食(例:V字谷の形成)。
- 氷食:氷河による侵食(例:U字谷の形成)。
- 風食:風による侵食(例:砂丘地形の形成)。
- 海食:波による侵食(例:海食崖や海食台の形成)。
③運搬作用
侵食や風化で生じた土砂や岩石を河川、風、氷河、波が運ぶ現象。
- 河川:河川による運搬は山地から低地へ土砂を移動させます。
- 風:砂漠地帯での砂の移動など。
④堆積作用
運ばれてきた物質が積もる現象。
- 扇状地:河川が山地から平地に出る地点で堆積する。
- 三角州:河川が海に流れ込む地点で土砂が堆積して形成される。
- 砂丘:風が運搬した砂が積もってできる地形。
外的営力の結果として生じる地形
1:削られる地形(侵食地形)
- V字谷:流水の侵食により形成。
- U字谷:氷河の侵食により形成。
- 海食崖:波の侵食により形成。
2:積もる地形(堆積地形)
- 扇状地:河川の運搬作用と堆積作用が生じる場所。
- 三角州:河川が運んだ土砂が海岸で堆積して形成。
- 砂丘:風によって運ばれた砂が堆積してできる。
外的営力の重要性
外的営力は内的営力によって生じた山地や高地を削り取り、最終的に地表を平坦化する方向に働きます。
たとえば、古くから存在する中国山地は長期間にわたる外的営力によって侵食され、なだらかな山地へと変化しました。
中国山地の地形的特徴とその背景
低平でなだらかな地形
中国山地は標高が低く、起伏が小さいことが特徴です。
その結果、全体として低平でなだらかな山地地形を形成しています。
以下の要因が重なって、侵食の進んだ緩やかな起伏を示す地形となっています。
外的営力による侵食
中国山地の地形は、長期間にわたる外的営力の影響を受けた結果です。
雨や風などによる風化作用や侵食作用が進行し、山地が削られて低平化しました。
この侵食の影響は、形成年代が古いことに起因しています。
内帯に位置する
中国山地は内帯に位置しており、現在のプレート境界から比較的遠い地域にあります。
そのため、内的営力(地殻変動や造山運動など)の影響が小さく、現在では活発な隆起運動が見られません。
形成年代の古さ
中国山地は形成された時期が古く、長い地質学的時間の中で外的営力にさらされ続けました。
その結果、雨や風などによる浸食作用が進行し、なだらかな山地地形が形作られました。
四国山地の地形的特徴とその背景
高峻で険しい地形
四国山地は標高が高く、起伏が大きいことが特徴です。
この険峻な地形は、現在も続く強い内的営力の影響を受けて形成されています。
内的営力による隆起
四国山地は西日本外帯に位置し、南海トラフでフィリピン海プレートが大陸プレートの下に沈み込む際に生じる内的営力により隆起しています。
このプレート運動は現在も活発で、四国山地が大きく隆起し続ける要因となっています。
外的営力による深い谷の形成
降雨や河川の侵食作用といった外的営力が、四国山地の地形形成に大きな影響を与えています。
特に夏季には南東からの季節風と山脈が相まって地形性降雨が発生し、四国山地の海側では降水量が非常に多くなります。
この豊富な降水量により侵食作用が強化され、深い谷地形が形成されました。
起伏を強調する要因
険しい地形をさらに際立たせるのが、内的営力による隆起と外的営力による激しい侵食の相互作用です。
このため、四国山地では起伏が非常に大きな地形が見られます。
解答例
X山地は低くなだらかだがY山地は強い内的営力で大きく隆起し、外的営力による激しい侵食で深い谷地形も形成され高く険しい。(59文字)