アメリカ＝メキシコ戦争の経緯/東大世界史2020第２問・問３

「アメリカ＝メキシコ戦争が勃発したきっかけを教えて」
「アメリカ＝メキシコ戦争でアメリカがカリフォルニアを獲得したことの意義を知りたい」
「カリフォルニアで発生したゴールドラッシュがもたらしたアメリカ社会の変化を整理しておきたい」

東大は2020年入試の世界史でアメリカ＝メキシコ戦争の名称及び経緯を２行（≒６０字）以内で記述させる問題を出題しました。

そこで、この記事では以下のことについて解説します。

この記事を読めばアメリカ＝メキシコ戦争のことはもちろん、その関連事項も整理できます。
是非最後までお読みください。

諏訪孝明

東京大学経済学部卒
１浪・東大模試全てE判定・センター７割台の崖っぷちから世９割、日８割、数２割で文科Ⅱ類に合格。
これまでに１０００人以上の受験生を指導。　
直近２年で偏差値７０超の学校への合格率が９０％を超えている。

講義

１９世紀のアメリカ合衆国は領土を西部へと拡張していき、それにともない人口も西部へ移動しました。
これを西漸運動（西部開拓）といいます。

特に1840年代からは白人による西部開拓を神から与えられた使命とし、領土拡大を正当化する「明白な天命」ということばが使われるようになり、西漸運動が活発化しました。

メキシコ領だったテキサスでもアメリカ系の移民が増加しました。
テキサスのアメリカ人たちは奴隷制の導入などをめぐってメキシコ政府と対立し衝突を繰り返すようになりました。

そこで、アメリカの支持のもとでメキシコからの独立を宣言し、テキサス共和国を成立させました。

テキサス共和国はすぐにアメリカ合衆国への併合を要請しました。

テキサス共和国からの要請に応じるかたちでアメリカ政府はテキサスを併合し、州として編入します。
メキシコはこれに反発し、両国の関係は悪化します。

上記の関係悪化が背景となり、アメリカによる挑発を直接的な原因としてアメリカ＝メキシコ戦争が勃発しました。アメリカ軍がメキシコシティを占領するなどしてアメリカが勝利しました。
そして、メキシコからカリフォルニアとニューメキシコを獲得しました。　

カリフォルニアの獲得はアメリカにとって以下の２つの意義がありました。

ゴールドラッシュについては次の項目で詳しく述べます。

カリフォルニアの獲得により、アメリカは太平洋・大西洋に接する「大陸国家」となりました。
その後、捕鯨などで得られる利益に注目して太平洋への関心を高めます。
そしてペリー提督が率いる艦隊を日本に送り、1854年に日米和親条約を締結して日本を開国させました。

カリフォルニアでは、アメリカ領となった1848年にゴールドラッシュが発生します。　　
カリフォルニアの人口は急増し、1850年には州に昇格しました。

このゴールドラッシュにより西部開拓は加速し、鉱山の開発や採掘が低賃金労働者の需要を高めました。
それにより中国人などアジア系の苦力の流入が拡大しました。

苦力は1860年代になると黒人奴隷制度廃止を背景にさらに増加しました。
そして大陸横断鉄道建設の労働力として労働に従事しました。

彼らが白人下層労働者の雇用を圧迫するようになったため、1882年に移民法を改正して中国人移民を禁止しました。この改正以降、アメリカでは日系の移民が増えました。

米国のテキサス併合をきっかけにアメリカ＝メキシコ戦争が勃発し、米国が勝利してメキシコからカリフォルニアなどを獲得した。

５９字です。
２行問題なので、制限字数以内におさまりました。

今回はこれを解答例とします。