「ナイル川の自然特性を知りたい!」
「ナイル川の沿岸で展開した農業は何?」
「農業以外の点にナイル川の自然特性はどんな影響を与えたんだろう?」
東京大学は2023年度入試において、世界史第2問の問3(a)で
近代以前においてナイル川の自然特性を利用する形で展開した農業について2行(≒60字)で説明させる問題を出題しました。
古代オリエントは論述対策の対象外になりやすいので、ここからの出題にドキッとした人が多かったのではないでしょうか。
この記事では、東大世界史9割の私が以下の内容について解説します。
- ナイル川の自然特性
- ナイル川の自然特性を利用した農業
- ナイル川の影響で発展した古代エジプトの技術
この記事を参考にしてナイル川に関する理解を深めてください。
講義
ナイル川の特性
ナイル川は雨季に増水し、毎年7月~10月にかけて氾濫して上流から肥沃な土壌を運んできました。
ポイントは以下の2つです
- 定期的に増水・氾濫する
- 上流から肥沃な土壌が運ばれてくる
ナイル川沿岸の農業
古代エジプトでは上流から運ばれる大量の水や肥沃な土を利用した灌漑農業が盛んになり、小麦などが栽培されました。
ナイル川の定期的な氾濫により古代エジプトでは農業が盛んとなって文明が成立し発展しました。
これを古代ギリシアの歴史家・ヘロドトスはその著作『歴史』のなかで「エジプトはナイルのたまもの」ということばを紹介して表現しました。
エジプトでは、ナイル川がもたらす大量の水が灌漑農業を可能にしました。
ナイル川の影響を受けて古代エジプトで発達したもの
強力な王権
ナイル川の水位を管理し、氾濫する時期を正確に予測できる存在は神の化身として大きな権力をもちました。
また、灌漑農業の実現には用水路などを整備するための土木工事が必要です。それを統制する巨大な権力が必要とされました。
以上の理由から、古代エジプトでは強大な王権が早期から成立しました。
太陽暦
エジプトでは、農業をするにあたりナイル川の氾濫時期を事前に予測する必要があります。
その予測のために、季節変化と日付のズレがない太陽暦を作成しました。
測地術
エジプトでは、毎年ナイル川の氾濫により土地の区画がぐちゃぐちゃになり、どこからどこまでが誰の土地だったのかが分からなくなります。よって、元の区画を復元するに戻すために土地を測量しなおす必要がありました。
このことから、古代エジプトでは測地術が発達しました。
アスワン=ハイダムの影響
1970年、ナセル政権下でアスワン=ハイダムが完成するとナイル川沿岸では洪水の被害が極めて減少しました。
ということは、上流から肥沃な土壌が運ばれてくることもなくなります。
また、ナイル川沿岸の灌漑農地では
アスワン=ハイダムの影響で一年中ナイル川や灌漑用水路の水位が安定する
⇒地下水の蒸発がおきづらくなる
⇒地下水の水位が上昇して地下水が地表に出る
⇒水分のみが蒸発し、塩類が地表に残る
というプロセスで塩害が発生しました。
また、灌漑水路における寄生虫の増加といった問題も発生しています。
答案作成
字数を気にせず書いてみる
ナイル川は毎年定期的に氾濫し、上流から下流に肥沃な土壌をもたらした。この土壌を利用して灌漑農業を行い小麦などを栽培した。
これで60字です。
2行問題なのでちょうどいい字数ですね。
解答例・まとめ
今回の解答例は
ナイル川は毎年定期的に氾濫し、上流から下流に肥沃な土壌をもたらした。この土壌を利用して灌漑農業を行い小麦などを栽培した。
とします。
東大世界史2023世界史解説記事リンク一覧
・第1問 https://ronjyutu-taisaku.com/todai-w-2023-1/
・第2問問1(b)https://ronjyutu-taisaku.com/2023-2-1-b/
・第2問問2(b)https://ronjyutu-taisaku.com/todai-w-2023-2-2-b/
・第2問問2(c)https://ronjyutu-taisaku.com/todai-w-2023-2-2-c/
・第2問問3(a)この記事です。
・第2問問3(b)https://ronjyutu-taisaku.com/todai-w-2023-2-3-b/