2021年の東大地理第2問設問A(3)では、「英語」「地域語」「州」の語をすべて用いてインドのヒンディー語とインドネシアのインドネシア語の公用語としての使用の広がりの違いについて3行(≒90文字)で説明する問題が出題されました。
本記事では、インドとインドネシアでの公用語の使用状況やその背景について詳しく解説します。
講義:インドとインドネシア語の公用語の特徴
①インド
インドは、世界有数の多民族・多言語国家です。
そのため、単一の言語による全国的な統一は難しく、公用語政策において複雑な対応が求められています。
ヒンディー語の位置づけ
ヒンディー語は連邦公用語に指定されています。
しかし、その使用は特定の地域に限られており、全国的な共通語にはなっていません。
インド政府はヒンディー語を全国的に普及させるための政策を進めていますが、非ヒンディー語地域では強い反発がみられます。
特に南部では、タミル語などの地域言語がアイデンティティの重要な要素とされており、ヒンディー語の普及に対する抵抗が根強い状況です。
英語の役割
英語は準公用語として、実質的な全国共通語の役割を果たしています。
英語は植民地時代から行政や教育、ビジネスの分野で広く使用されてきました。
現在でも、経済のグローバル化やICT産業の発展に伴い、英語の重要性がますます高まっています。
特にヒンディー語への反発がある地域では英語が中立的な共通語として受け入れられています。
州ごとの公用語
インドでは、各州ごとに公用語が独自に設定されています。
これは言語を基準に州を再編成した歴史的経緯に基づいています。
インドには約22の主要言語(憲法で認められた言語)と、数百に及ぶ地域言語が存在します。
各州では、その地域で広く話される言語を公用語とし、行政や教育において使用しています。
地域言語を公用語とすることで、多言語国家としての多様性を維持して各地域の文化的アイデンティティが守られています。
②インドネシア
インドネシアは700以上の民族とそれに伴う多様な言語が共存する、多民族・多言語国家です。
この多様性の中で国民統合を図るための言語政策が重要な役割を果たしています。
インドネシア語の役割
インドネシア語は全国的な公用語として採用され、国民統合の要となっています。
そのため、インドネシア全土で教育・行政・メディアなどあらゆる分野で使用されています。
地域語との併存
インドネシア語は全国に普及していますが、多様な地域語と共存しています。
インドネシアには700以上の言語が存在し、地域社会の文化やアイデンティティの基盤となっています。
例として、ジャワ語、スンダ語、バリ語などが挙げられます。
地域語は主に家庭や地域コミュニティで使用され、インドネシア語との二言語使用が一般的です。
これにより、地域文化を尊重しながら全国的な言語の統一を維持する仕組みが確立されています。
解答例
インドでは連邦公用語のヒンディー語を使用する地域が限られており、英語や各州の公用語が広く使用される。インドネシアには多くの地域語があるが、インドネシア語が全国に普及している。(87文字)