【東大地理2021】温暖化により降水量が減少することが予想されている大陸上の地点と、増加することが予想されている大陸上の地点|第1問設問A(2)

東大地理2021第1問設問A(2)温暖化により降水量が減少する予想の地域と増加する予想の地域 地理

2021年の東大地理第1問設問A(2)では、温暖化の影響で降水量が増加または減少する地点に対応する雨温図を選ぶ問題が出題されました。
本記事では、与えられた雨温図の特徴とその地域における気候を詳しく解説して正解へ導きます。

解説する気候は以下のとおりです。

  • 熱帯雨林気候の特徴
  • サバナ気候の特徴
  • 温暖湿潤気候の特徴
  • 地中海性気候の特徴
執 筆 者
諏訪孝明

東京大学経済学部卒
1浪・東大模試全てE判定・センター7割台の崖っぷちから世9割、日8割、数2割で文科Ⅱ類に合格。
これまでに1000人以上の受験生を指導。 
直近2年で偏差値70超の学校への合格率が90%を超えている。

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資料の読み取り

図1-3:4つの雨温図

雨温図A

  • 気温:一年を通して高い(月平均気温が18℃以上)
  • 降水量:一年を通して多い(年降水量が非常に多く、降水量の年較差が小さい)
  • 気候:熱帯雨林気候
  • 主な該当地域:インドネシア、アマゾン川流域など赤道付近

雨温図B

  • 気温:一年を通して高い(月平均気温が18℃以上)
  • 降水量:降水量が極端に多い月(雨季)と極端に少ない月(乾季)がある
  • 気候:サバナ気候
  • 主な該当地域:乾燥帯の周辺(アラビア半島や北アフリカの周辺)

雨温図C

  • 気温:四季があり、年較差が大きい
  • 降水量:夏は多雨、冬は少雨で年較差が大きい
  • 気候:温暖湿潤気候
  • 主な該当地域:東アジア(日本、中国東部)、北米東部など

雨温図D

  • 気温:極端な暑さや寒さがない
  • 降水量:夏は降水量が少なく、冬は降水量が多い
  • 気候:地中海性気候
  • 主な該当地域:地中海沿岸、アメリカカリフォルニア州沿岸、南アフリカ共和国南西部

図1-2:地球の平均気温上昇による降水量の変化

図1-2では、地球の平均気温が2℃上昇するときに降水量が特に変わる地域を示しています。
この図からは、以下のことが読み取れます。

地点降水量の予想
雨温図Aが示す地点(東南アジアの赤道直下)増加の地域、減少の地域ともに該当せず
雨温図Bが示す地点(アラビア半島・北アフリカ周辺)20%以上増加する地域に該当
雨温図Cが示す地点(東アジア等)増加の地域、減少の地域ともに該当せず
雨温図Dが示す地点(地中海沿岸)5%以上減少する地域に該当

講義:この問題で登場した気候の特徴

熱帯雨林気候(Af)

※年中赤道低圧帯の影響を受けるため、高温多湿の状態が続く。

①気温

・年中高温で、最も寒い月でも月平均気温が18℃以上。
・気温の年較差が非常に小さい。

②降水量

・最も降水量が少ない月でも月降水量60mm以上。
・年間を通して降水量が安定して多い。

③分布

・赤道付近に分布(赤道を挟んで緯度5度程度の範囲)。
・具体例
⇒南アメリカ:アマゾン川上流域(セルバ)。
⇒東南アジア:インドネシア、マレーシア。
⇒アフリカ:コンゴ盆地周辺。

④植生

・常緑広葉樹の密林(熱帯雨林)が広がる。
・非常に背が高い樹木が密生しており、上部に葉が茂っている。
⇒そのため下部は湿気が多く、太陽光が届きにくい。
・代表例
⇒セルバ:南アメリカのアマゾン川上流域。
⇒ジャングル:東南アジアやアフリカ。
・熱帯雨林の乱伐が深刻な環境問題となっている。

⑤土壌

・ラトソル:酸性で地力が低く、農業には適さない。
⇒鉄やアルミニウムが酸化して赤色になる。
⇒降水による養分の流出(溶脱)が激しい。
⇒ボーキサイト(ラトソルに多く含まれるアルミニウムを原料とする鉱物)が生産される。

⑥産業

・焼畑農業:熱帯地域では焼畑農業が見られる。
・プランテーション農業:天然ゴム、油やし、カカオなどの作物が盛んに栽培される。

⑦社会

・高床式住居が多い:高温多湿な気候に対応。
⇒風通しを良くして蒸し暑さを和らげる。
⇒害虫の侵入を防ぐ設計。
・風土病:黄熱病やマラリアなどの風土病が残る地域である。

サバナ気候(Aw)

①気温

・年中高温で、最寒月でも平均気温が18℃以上。

②降水量

・雨季と乾季が明瞭に分かれる。
⇒夏季は赤道低圧帯の影響で多雨。
⇒冬季は亜熱帯高圧帯(中緯度高圧帯)の影響で少雨。
・乾季の降水量は月降水量60mm未満。

③分布

・熱帯雨林気候(Af)と乾燥帯(南北回帰線付近)の間に位置。

④植生

・長草草原
⇒草原+乾季にも耐えるバオバブやアカシアなどの樹木
・具体例
⇒タンザニア・コンゴ等:サバナ(サハラ砂漠の南側など)
⇒ベネズエラ:リャノ(オリノコ川流域)
⇒ブラジル:カンポ(ブラジル高原)
⇒パラグアイからアルゼンチン北部:グランチャコ

⑤土壌

・ラトソル:赤色土壌で養分が乏しく、農業に不適。
・肥沃な間帯土壌(一部地域)
⇒テラローシャ(ブラジル高原):コーヒー栽培に適している。
⇒レグール土(インドのデカン高原):綿花栽培に利用される。

⑥産業

・プランテーション農業:雨季と乾季を生かした作物栽培。
⇒栽培作物:綿花、さとうきび、コーヒーなどが中心。
・牧畜:乾季に対応した放牧(ヤギや牛)。

⑦社会

・雨季に降水量が多すぎると洪水被害が発生。
・乾季の降水量不足により干ばつのリスクが高まる。

温暖湿潤気候(Cfa)

温帯なので、最も寒い月の平均気温が-3℃~18℃。

①気温

・夏:高温多雨。
・冬:低温少雨。
・気温の年較差が大きい。

②降水量

・一年を通して降水量が多い多雨地域。
・夏には熱帯低気圧(台風やハリケーン)の影響を受ける。
・季節風の影響で四季が明瞭。

③分布

・大陸東岸の緯度30~40度付近に分布。
・具体例
⇒東アジア(日本、中国)
⇒北アメリカ東部
⇒南アメリカ南東部

④植生

・森林
⇒低緯度側:常緑広葉樹(シイやカシなど)
⇒高緯度側:落葉広葉樹(ブナやカエデ)や針葉樹の混合林
・草原:降水量の少ない地域では温帯草原がみられる。
⇒地域ごとの呼称
⇒北アメリカ:プレーリー
⇒南アメリカ:パンパ
⇒ハンガリー:プスタ

⑤土壌

・褐色森林土:養分が豊富で肥沃な土壌。
⇒農業に適しており、多くの地域で利用されている。

⑥産業

・気候と降水量が適度なため、主要穀物の生産が盛ん。
・地域ごとの農業形態
⇒アジア(東アジア):豊富な降水を利用して稲作が発達。中国や日本では水稲耕作が一般的。
⇒北アメリカ東部:小麦、大豆、とうもろこしの栽培が盛ん。酪農や混合農業が行われる。
⇒南アメリカ南東部(湿潤パンパ):混合農業や放牧が見られる。

地中海性気候(Cs)

温帯なので、最も寒い月の平均気温が-3℃~18℃。

①気温

・一年を通して比較的温暖。

②降水量

・夏季
⇒亜熱帯高圧帯の影響で乾燥。
⇒降水量が少ない。
・冬季
⇒亜寒帯低圧帯や偏西風の影響で湿潤。
⇒十分な降水が見られる。

※地球温暖化に伴い、降水量の減少による砂漠や草原の拡大が懸念されている。これにより、水資源の不足や農業への影響が予想される。

③分布

・乾燥帯の高緯度側に位置し、大陸西岸の緯度30~40度付近に広がる。
・主な分布地域
⇒ヨーロッパの地中海沿岸(イタリア、スペイン、ギリシャなど)
⇒アメリカ合衆国西岸(カリフォルニア州)
⇒南アフリカ南西部(ケープタウン周辺)
⇒オーストラリア南西部(パース)
⇒南アメリカのチリ中部

④植生

・硬葉樹(常緑広葉樹):夏の乾燥に耐えられる葉の小さい硬葉樹が分布。
・例:オリーブ、コルクガシ
・樹木が乏しい地域も多く見られる。

⑤土壌

・テラロッサ:石灰岩の風化によって形成された赤色土壌。養分は少ないが、果樹栽培には適している。

⑥産業

・果樹栽培:夏季の乾燥を利用した耐乾性果樹の栽培が盛ん。
⇒主な作物:オリーブ、ブドウ、かんきつ類(レモン、オレンジなど)。
・冬季の降水を利用した小麦栽培。
・移牧:夏季と冬季で牧地を移動する上下垂直移牧が行われる(山地を季節に応じて上下に移動する牧畜)。
・灌漑農業:スペインやカリフォルニア州などでは灌漑を利用して稲作も行われている。

⑦社会

・石造りの家屋:地中海地方では古くから建てられている。石灰で白く塗られ、熱を反射する設計になっている。

解答

減少ーD、増加ーB。

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