【東大地理2022】住宅地や交通インフラの開発と年齢階層別人口構成|第3問設問A(3)

東大地理2022第3問設問A(3)住宅地や交通インフラの開発と年齢階層別人口構成の変化 地理

2022年の東大地理第3問設問A(3)では、東京郊外の特定地域における地形図と年齢階層別人口構成の変化を関連づけ、3地区の人口特性を把握する問題が出題されました。
この問題では、ニュータウン開発や郊外の通勤・通学の特徴を理解し、人口構成の変化を的確に読み取る力が問われました。

この記事では、以下のテーマごとに詳しく解説します。

  • 与えられた100%積み上げ棒グラフと地形図の読み取り
  • 郊外のニュータウン開発
  • 郊外から都心への電車通勤と昼夜間人口比率
執 筆 者
諏訪孝明

東京大学経済学部卒
1浪・東大模試全てE判定・センター7割台の崖っぷちから世9割、日8割、数2割で文科Ⅱ類に合格。
これまでに1000人以上の受験生を指導。 
直近2年で偏差値70超の学校への合格率が90%を超えている。

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資料の読み取り

図3-3:年齢階層別人口構成の変化(100%積み上げ棒グラフ)

図3-3の積み上げ棒グラフを分析し、A地区、B地区、C地区の特徴を整理します。

A地区

  • 高齢者の割合:年々増加している。
  • 幼年人口の割合:年々増加している。
  • 現役世代の割合:減少傾向にある。

以上から、

  • 幼年人口の割合が増加していることから、新しい住宅地に若い世代が流入している。
  • 一方で、過去からの住民が高齢化している可能性もある。

B地区

  • 高齢者の割合:3地区の中で最も高く、さらに増加している。
  • 幼年人口の割合:10年間ほぼ横ばいで変化がない。
  • 現役世代の割合:年々低下している。

以上から、

  • 古くから住宅地として発展しており、住民の高齢化が進行している。
  • 若い世代の流入がほとんどなく、高齢化が際立っている。

C地区

  • 高齢者の割合:3地区の中で最も低く、10年間横ばい。
  • 幼年人口の割合:3地区の中で最も高くなっており、増加している。
  • 現役世代の割合:3地区の中で最も高い。

以上から、

  • 新しく整備された住宅地に若年層や働き盛りの世代が多く流入している。
  • 高齢化の進行が最も遅く、子育て世代が多い特徴的な地域である。

特徴のまとめ

地区高齢者割合幼年人口割合現役世代割合地域の特徴
A増加増加減少新興住宅地
世代交代が進む地域
B最も高い
さらに増加
横ばい減少古くからの住宅地
高齢化が著しい
C最も低く、横ばい最も高く、増加最も高い若年層や現役世代が多い新しい住宅地

図3-1・3-2:地形図

地形図(図3-1、図3-2)を基に、各地区(①、②、③)の特徴を整理し、それぞれA地区、B地区、C地区に対応づけます。

地区③

特徴

  • 1975年時点ですでに住宅地が存在している。
  • 駅から遠い住宅地が広がっている。
  • 都心への電車での通勤・通学が不便なため、現役世代より高齢者が多いと推測される。
  • 長く居住する住民が多いため、高齢化が進行している可能性が高い。

対応する地区:B地区

  • 高齢者割合が最も高く、現役世代が減少している。
  • 幼年人口が横ばいで増加が見られない。

地区①

特徴

  • 1975年時点では住宅地がない。
  • 2019年時点では住宅地が広がり、病院も立地。
  • 住宅地は狭いエリアに集中し、駅に非常に近い。
  • 都心への通勤・通学に便利なため、現役世代が多く、高校生・大学生や子育て世代が多い地域と推測される。

対応する地区:C地区

  • 幼年人口と現役世代の割合が最も高い。
  • 高齢者割合が最も低い。
  • 新しい住宅地として子育て世代が流入していると考えられる。

地区②

特徴

  • 1975年時点ではほとんどが荒地。
  • 2019年時点では広範囲にわたる住宅地と大学・研究所がみられる。
  • 広いエリアに住宅が広がるが、駅から遠い住宅地が多く、通勤・通学がやや不便。
  • 都心近接性が低い分、C地区より若年層の割合が少なく、高齢化が進行しつつある。 

対応する地区:A地区

  • 高齢者の割合が増加傾向にあり、幼年人口も増加している。
  • 広い住宅地が広がり、世代交代が進んでいる地域と考えられる。

講義

郊外とは

  • 都市の周辺地域を指し、多くは住宅地として機能。
  • 地価が都心から離れるほど安価になる。
  • 鉄道や道路網の整備によりサラリーマンや通学者の通勤・通学圏内となり、ベッドタウンや住宅衛星都市が形成される。

郊外のニュータウン開発

ニュータウン形成の背景と目的

  • 高度経済成長期(1955年以降):東京、大阪、名古屋などの大都市圏で急速な人口集中が進行。
  • 1960年代:大都市での住宅不足を解消するために、住宅公団や鉄道会社が郊外で大規模な住宅開発を開始。
  • ニュータウンの目的:都市部の住宅需要を満たし、計画的な住環境を提供すること。

特徴

  • 開発当初は、同じ時期に入居する同世代の住民が多かった。
  • 大規模な公団住宅や戸建て住宅が整然と配置。
  • 都心へ通勤可能な距離に位置し、交通インフラも整備された。

ニュータウンの課題

①高齢化の進行

  • 高度経済成長期に入居した世代がそのまま定住し、高齢化が進行。
  • 労働力人口(現役世代)が減少し、地域経済の縮小。
  • 高齢者向け医療・福祉施設や交通インフラの不足。

②少子化の影響

  • 高齢化と並行して出生率低下が進み、学校の統廃合が増加。
  • 子どもが減少し、地域の活気が失われつつある。

③建物の老朽化

  • 入居開始から数十年が経過し、建物の老朽化が顕著に。
  • 建て替えや耐震補強の必要性が高まっている。

④地域コミュニティの希薄化

  • 高齢者世帯や少子化の進行により、地域の交流が減少。
  • 新規住民が増えないため、住民間の関係が希薄。

課題解決に向けた取り組み

①高齢者向け住宅設備

  • バリアフリー住宅の普及や高齢者専用の賃貸住宅の開発。
  • 医療・福祉施設をニュータウン内に誘致。

②若年層の流入促進

  • 老朽化した住宅を再生して手頃な価格で販売。
  • 保育施設や学校の整備で子育て環境を改善。

③地域活性化

  • コミュニティ形成を支援するイベントの開催。
  • 地域住民が交流できる公共スペースを整備。

④持続可能な都市構造の構築

  • 公共交通網を再整備して、高齢者でも移動しやすい環境を整える。
  • 環境に配慮したスマートシティ化の推進。

郊外から都心への電車通勤と昼夜間人口比率

昼間人口と夜間人口の定義

①昼間人口

  • 常住人口+通勤・通学などで日中に移動してくる人の数ー外部に出ていく人の数を差し引いた数
  • その地域で昼間に存在する人口のこと。
  • 商業やオフィス機能が多い地域では、昼間人口が夜間人口を大きく上回る。
  • 例:東京の都心部。

②夜間人口

  • その地域に住んでいる人(常住人口)を指す。
  • 日中に出かけているかどうかを問わず、住民全体を含む。

③昼夜間人口比率

  • 夜間人口を100人とした場合の昼間人口の割合。
  • 昼夜間人口比率 = (昼間人口 / 夜間人口) × 100。

昼夜間人口比率の特徴

①都心部(例:東京都千代田区)

  • 昼間に通勤・通学してくる人口が多い。
  • 昼夜間人口比率は非常に高い(例:千代田区は約1,800%)。
  • 商業施設、官公庁、大企業のオフィスが集積している。

②郊外の住宅都市(千葉県・神奈川県)

  • 昼間には多くの住民が都心に出勤・通学するため、昼間人口は夜間人口より著しく少ない。
  • 昼夜間人口比率が低い(100%を下回る)。
  • 大都市周辺のベッドタウンが該当する。

大都市圏の人口動態

①都心部の役割

  • 都心部には、政治・経済の中枢機能が集中する。(例:東京都千代田区・中央区)
  • 鉄道・道路網の結節点としてのターミナル駅が形成される。(例:東京駅、新宿駅)
  • 鉄道網や高速道路を介して、昼間人口が各地から集中する。

②郊外の役割

  • 大都市圏郊外は、ベッドタウンとして機能。
  • 都心への通勤・通学のため、昼間に多くの住民が移動。
  • 郊外のニュータウンや住宅地の昼夜間人口比率は低い。

郊外と都心を結ぶ鉄道網

①ターミナル駅と鉄道網の役割

  • 郊外と都心を結ぶ鉄道網が発達し、通勤・通学者がスムーズに都心部へ移動可能。
  • ターミナル駅には副都心(例:新宿、池袋)としての商業・娯楽施設が立地する。

②鉄道網の影響

  • 鉄道の利便性により、郊外に広大な住宅地が形成される。
  • 例:埼玉県浦和市や千葉県船橋市などのベッドタウン。

郊外地域における昼夜間人口比率の変化

  • 都心部との交通網がさらに発展することで、昼間人口の流出が進む可能性が高い。
  • 一方で、リモートワークの普及などによって、郊外での昼間人口の増加も一部で見られる。

解答

Aー②、Bー③、Cー①

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