2022年の東大地理第3問設問A(1)では、地形図から読みとれる地形と土地利用の対応関係について1行(≒30文字以内)で説明する問題が出題されました。
この記事では、以下のテーマごとに詳しく解説します。
- 台地とそこでの土地利用についての解説
- 浸食谷とそこでの土地利用についての解説
- 沖積平野とそこでの土地利用についての解説
- 地形図の読み取りの解説
講義
1:台地
台地の特徴
①形成
台地は更新世に形成された谷底平野、扇状地、三角州などが隆起してできた台状の地形です。
河岸段丘や海岸段丘も台地の一種です。
丘陵に比べて平らな面積が広いのが特徴です。
②自然条件
高燥地で水はけが良い一方、取水が困難です。
そのため集落の発達が遅れましたが、宙水や湧水帯の周辺では集落が形成されました。
水を確保できるようになった現在では、集落が立地しています。
土地利用
①伝統的利用
・台地は水田には不適で、畑地、果樹園、雑木林などに利用されてきました。
・湧水帯や宙水の近くでは農業や集落が発展しました。
②近年の利用
・住宅地や工業団地として開発が進行しています。
・大都市郊外では、ニュータウン、工業団地、ゴルフ場などの大規模開発が行われています。
③災害対策の観点
地盤が安定し標高が高いため、災害リスクが低い土地として注目されています。
洪水や液状化の影響を受けにくく、災害時の避難場所や災害リスクを軽減する住宅地として重要です。
2:浸食谷
浸食谷の特徴
①形成
浸食谷は長い時間をかけた侵食作用や風化作用によって形成された地形です。
樹枝状に形成されることが多く、これを樹枝状浸食谷といいます。
②自然条件
谷底は標高が低く、周囲から水が集まりやすい低湿地です。
地形的に湿気が多く、降雨が溜まりやすい環境が整っています。
土地利用
①伝統的利用
浸食谷の低湿地は水分が豊富なため、水田として利用されることが多いです。
浸食谷の近くでは湧水が得られる場合があり、小規模集落や農地が立地することがあります。
②近年の利用
現代では排水整備や防災対策を進めることで、安定した農地利用が可能になっています。
課題と注意点
浸食谷は洪水のリスクが高い場合があります。
特に急な大雨では水の流入が集中するため、水害防止策が必要です。
排水路や堤防を整備しています。
3:沖積平野
沖積平野の特徴
①形成
沖積平野は完新世(約1万年前以降)の間に河川が運搬してきた堆積物が堆積して形成された低平な地形です。
河川の流域ごとに特有の形態を持ち、上流から順に扇状地、氾濫原、三角州といった地形が現れます。
②土地条件
・河川沿いに広がり、肥沃な土壌を持つことが多いです。
・低湿地が広がり、水田など水分を多く必要とする作物に適した環境です。
各地系とその土地利用
①扇状地
河川の上流部で形成される扇形の地形です。
河川が山地から平地へ出た際に堆積した礫や砂が多く、地盤が安定しています。
扇状地の中央部は水が地下に浸透しやすく、果樹園や畑として利用されます。
扇端(湧水帯)では水が得られるため、集落や水田が立地することが多いです。
②氾濫原
中流域で河川の氾濫によって形成される平坦地です。
自然堤防や後背湿地が特徴です。
・自然堤防:洪水時に河川沿いに堆積した微高地。集落や畑が立地する。
・後背湿地:自然堤防の背後に広がる低湿地。排水設備の整備後に水田として利用される。
③三角州
河口部で形成される三角形の平野です。
河川が運ぶ土砂が堆積してできました。
水資源が豊富なため、水田として利用されることが多かったです。
堤防や排水路の整備がすすんだ後は、集落も成立しました。
課題
・洪水リスクが高い地域では、排水設備の整備や堤防の建設が必要です。
・都市化に伴う土地の乱開発が環境問題を引き起こすこともあるため、適切な土地利用計画が求められます。
資料の読み取り:図3-1
台地とその土地利用
地図中央部の標高が一定で、等高線が間隔をあけて広がっている平坦な地形が台地です。
この台地部分では、畑や果樹園、森林が広く分布していることが地図記号から確認できます。
また、一部には集落が点在しており、台地上の高燥地が住宅地として利用されていることが分かります。
浸食谷とその土地利用
台地部分を分断するように、等高線が密集して樹枝状に刻まれている部分が複数見られます。
これらは浸食によって形成された谷地形で、特に低湿地が広がることから水田としての利用が目立ちます。
沖積平野とその土地利用
地図北東部には、等高線が見られない平坦な地形が広がっています。
この地域は沖積平野であり、河川沿いに水田が分布していることが地図記号から確認できます。
解答例
台地上には集落や森林、浸食谷や沖積平野には水田が見られる。(29文字)