【東大地理2022】近年、日本での野生動物に由来する人獣共通感染症の発生リスクが高まっているとされる原因|第1問設問A(4)

東大地理2022第1問設問A(4)日本で近年、人獣共通感染症の発生リスクがさらに高まりつつあると考えられている理由 地理

2022年の東大地理第1問設問A(4)では、「日本で近年野生生物に由来する人獣共通感染症の発生リスクがさらに高まりつつある主要な原因」を、人と野生動物との接触機会の増加や土地利用形態の変化と関連づけて2行(≒60文字)で説明する問題が出題されました。

この記事では、以下のポイントを中心に解説します。

  • 里山とはなにか
  • 都市の拡大による里山の減少
  • メガソーラーの建設による里山の減少
  • 耕作放棄地の増加など農林業の縮小による里山の荒廃
執 筆 者
諏訪孝明

東京大学経済学部卒
1浪・東大模試全てE判定・センター7割台の崖っぷちから世9割、日8割、数2割で文科Ⅱ類に合格。
これまでに1000人以上の受験生を指導。 
直近2年で偏差値70超の学校への合格率が90%を超えている。

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講義:里山の減少や荒廃による野生生物との接触機会増加

里山とはなにか

定義と構造

里山とは、山間地に広がる集落や農地とそれに隣接する森林地域を含むエリアを指します。
この地域は原生的な自然と都市の中間に位置し、主に以下の要素で構成されています。

  • 集落:人が生活する空間
  • 二次林:人間の活動によってつくられた森林
  • 農地・ため池:食料生産や水栖源を確保する場

人間と自然の調和

里山には以下の機能があり、長年にわたり人間と自然が共存する形で利用されてきました。

  • 供給機能:薪炭や肥料、キノコ、木の実などの自然資源を人間に提供する機能。
  • 防災機能:森林が土砂災害や洪水から集落を守る機能。

管理の重要性

里山は人間の手入れによって維持される自然環境です。
適切な管理を行わないと荒廃し、以下の問題が生じます。

  • 植生の変化:侵略的な植物や樹木が増え、多様性が失われる。
  • 動物の移動:里山が荒廃すると野生生物が人間の生活圏へ進出する機会が増える。

土地利用形態の変化による里山の変容とその影響

1:都市化の進行と郊外拡大

都市化が進む中での住宅需要の高まりに対応するため、山地や森林が宅地として開発されて野生生物の生息域が縮小しています。
山地や森林と人間社会の緩衝地帯としての役割を果たしていた里山でも宅地開発が進行し、面積が減少しています。
無秩序な都市化(スプロール現象)により、農地や緑地が住宅や工場によって虫食い状に開発されています。
この現象は人間と野生生物の生活圏が混在する状況を生み出し、接触機会を増加させています。

里山の減少により、野生生物が人間の生活圏に進出する機会が増加しています。
野生生物が人間の近くで生活することは、人獣共通感染症の発生リスクが高まる要因となっています。

2:メガソーラーの設置

近年、日本では再生可能エネルギーの導入促進政策により大規模な太陽光発電施設(メガソーラー)の設置が急増しています。
これに伴い、里山が持つ環境的・生態学的価値が影響を受けています。

太陽光発電施設は平坦な土地を必要とするため、山間部や農村地帯の里山も開発の対象となっています。
この開発により、森林や草地が削られ、従来の里山景観が大きく変容しています。

かつて自然と人間の共生の場として維持されてきた里山は、太陽光発電施設の設置による土地改変でその面積を減少させています。
この減少は、里山の生態系や人々の生活に影響を及ぼします。

太陽光発電施設の建設により野生生物が本来の生息域を失い、人間の生活圏に移動せざるを得なくなります。
生活圏が接近することで人獣共通感染症を媒介する野生動物との接触機会が増え、感染リスクが高まります。

3:農林業の縮小

高度経済成長期以降、商工業の発展により農村から都市部への人口流出が進み、若年層の減少や農業従事者の高齢化が進行しました。

人手不足や農業労働力の高齢化により農地の維持管理が困難となり、耕作放棄地が拡大しています。
これに伴い、従来は人間の管理下にあった里山の荒廃が進行しています。

耕作放棄地や荒廃した里山は、野生生物にとって新たな生息域となります。
この結果、人間の生活圏と野生生物の生息域が隣接・重複するケースが増えています。

野生動物が人間の生活圏に侵入することで、人獣共通感染症の媒介リスクが高まります。
さらに、媒介生物(蚊やダニなど)が増殖しやすい環境が整い、感染症リスクがさらに拡大します。

解答例

宅地開発、太陽光発電施設の設置、高齢化による耕作放棄地増加で里山が減少・荒廃して人と野生生物の生活圏が隣接したから。
(58文字)

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