オスマン帝国・セリム1世の対外戦争の成果/東大世界史2024第2問・問2(c)

世界史

「セリム1世の業績について知りたい」
「オスマン帝国発展の歴史を整理しておきたい」
「オスマン帝国と対立したイスラム国家であるティムール朝、サファヴィー朝、マムルーク朝についても整理しておきたい」

東大は2024年入試でオスマン帝国のセリム1世の対外戦争の成果について2行で説明させる問題を出題しました。
イスラム教の強国として超有名なオスマン帝国ですが、特定の時期における対外戦争の成果について問われると何を答えたらよいか困ったことはないでしょうか?

オスマン帝国は他のイスラム教国家ともヨーロッパの国家とも対外戦争で衝突していますので、覚えるべきことが多く大変だと感じている方は多くいます。

諏訪孝明
諏訪孝明

スルタンごとに業績を整理しておくと覚えやすいです!

そこで、本記事では東大卒で塾講師歴十数年のわたしがオスマン帝国の建国から最盛期までの対外戦争について解説します。

記述・論述問題対策に必要なことがらが理解できるよう、わかりやすく解説していくので是非最後までご覧ください!

執 筆 者
諏訪孝明

東京大学経済学部卒
1浪・東大模試全てE判定・センター7割台の崖っぷちから世9割、日8割、数2割で文科Ⅱ類に合格。
これまでに1000人以上の受験生を指導。 
直近2年で偏差値70超の学校への合格率が90%を超えている。

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講義

オスマン帝国建国~最盛期の覚えるべきスルタンとその業績

オスマン帝国は西アジア・東地中海に君臨した強国です。
ここでは、建国から16世紀にスレイマン1世のもとで最盛期を迎えるまでの展開を、スルタンごとに整理しておきましょう。

オスマン1世(13世紀末)

オスマン帝国の建国者。
名前がそのまんまなので覚えやすいですし、出題されることもほぼありません。
(「オスマン帝国の建国者は?」という問題を出題する気にはならないですね。)

ムラト1世(14世紀後半)

  • バルカン半島に進出する
  • アドリアノープルへ遷都する
  • コソヴォの戦いでセルビアを撃破する

アドリアノープル:バルカン半島東南部の都市。その名称はローマ皇帝ハドリアヌスに由来している。

バヤジット1世(14世紀末~15世紀初)

  • ニコポリスの戦いでヨーロッパ連合軍を撃破する
  • アンカラの戦いでティムール朝に敗北⇒オスマン帝国は滅亡の危機となる

ティムール朝はサマルカンドを都とし最盛期には東西トルキスタン、イラン、イラク、北インドを支配。
オスマン帝国を破り、明への遠征も画策した国家です。

メフメト2世(15世紀半ば)

  • コンスタンティノープルを征服し、ビザンツ帝国を滅亡させる
  • イスタンブールへ遷都する

セリム1世(16世紀前半)

  • サファヴィー朝の遊牧民騎馬軍団を撃破する
  • マムルーク朝を滅ぼす

サファヴィー朝とは、ティムール朝衰退後にイランに成立した王朝です。
サファヴィー朝はシーア派、オスマン帝国はスンナ派の国家であるため宗派の対立がありました。

チャルディラーンの戦い
オスマン帝国・イェニチェリの鉄砲隊がサファヴィー朝の騎馬隊を破った戦いです。
鉄砲隊が騎馬隊を破るというのは、日本史での長篠の戦いと同じ構図ですね。

マムルーク朝の歴史について紹介します。
①14世紀
エジプト・カイロを中心に繁栄した。
インド洋と地中海を結ぶ交易に従事し、カーリミー商人香辛料貿易を独占していた。
②16世紀初め
ポルトガルにディウ沖海戦で敗れ、経済的な基盤を失って衰退する。
その後オスマン帝国に滅ぼされる 。     

マムルーク朝を滅ぼしたことのオスマン帝国にとっての意義

 ①メッカ・メディナの保護権を獲得し、スンナ派イスラム世界の盟主となる
 ②エジプト・シリアを併合したことで東地中海の制海権を得る

スレイマン1世(16世紀半ば)

  • オスマン帝国の最盛期を築く
    ⇒15世紀後半以降の「世界の一体化」を背景とする世界的な貿易の活発化が要因
  • モハーチの戦いに勝利⇒ハンガリーを征服する
  • 第1次ウィーン包囲⇒ヨーロッパに脅威を与えるも失敗に終わる
  • プレヴェザの海戦⇒スペイン・ヴェネツィアの連合艦隊に勝利して地中海全体の覇権を握る
  • フランスのフランソワ1世と同盟を結ぶ⇒ハプスブルク家に対抗する

第1次ウィーン包囲の世界史的意義
⇒神聖ローマ帝国皇帝カール5世が国内で対立していたルター派の諸侯と妥協せざるを得なくなり、
 マルティン=ルターの宗教改革が成功する遠因になる。

ここまでのまとめ

スルタンごとの対外戦争についてまとめておきます。

答案作成

字数を気にせず書いてみる

シーア派のサファヴィー朝を破った。マムルーク朝を滅亡させエジプト・シリアを併合して東地中海の制海権を得、メッカ・メディナの保護権を得てスンナ派イスラム世界の盟主となった。
85字です。
2行問題なので大きく削る必要があります。

字数調整

シーア派のサファヴィー朝を破った。マムルーク朝を滅亡させエジプト・シリアを併合して東地中海の制海権を得、メッカ・メディナの保護権を得てスンナ派イスラム世界の盟主となった。
57字です。

事実のみを残し、その意義・意味を削った形となりました。

解答例/この記事のまとめ

今回の解答例は

シーア派のサファヴィー朝を破った。マムルーク朝を滅亡させエジプト・シリアを併合し、メッカ・メディナの保護権を得た。

とします。

東大世界史2024世界史解説記事リンク一覧
・大問1問1   https://ronjyutu-taisaku.com/todai-2024-1-1/
・大問1問2   https://ronjyutu-taisaku.com/todai-2024-1-2/
・大問2問1(a)https://ronjyutu-taisaku.com/todai-2024-2-1-a/
・大問2問1(b)https://ronjyutu-taisaku.com/todai-2024-2-1-b/
・大問2問2(b)https://ronjyutu-taisaku.com/todai-2024-2-2-b/
・大問2問2(c)この記事です
・大問2問3(a)https://ronjyutu-taisaku.com/todai-2024-2-3-a/

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