【東大地理2022】1980年代から2000年代にかけて人獣共通感染症の発生件数が増加した要因|第1問設問A(1)(2)

東大地理2022第1問設問A(1)(2)人獣共通感染症が増加した要因 地理

2022年の東大地理第1問設問A(1)(2)では、人獣共通感染症の発生件数が1980年代から2000年代にかけて4倍に増加した要因に関する問題が出題されました。
この問題は、現代社会が直面する感染症リスクの背景を、地理的要素や社会的変化から捉える力を養う内容です。

この記事では、以下の5つの主な人獣共通感染症の増加要因について解説します。

  • グローバル化の進展
  • 地球温暖化
  • 動物性タンパク質の需要増加と畜産の拡大
  • 人と野生動物との接触機会の増加
  • 都市化による人口密集と医療・公衆衛生の不備
執 筆 者
諏訪孝明

東京大学経済学部卒
1浪・東大模試全てE判定・センター7割台の崖っぷちから世9割、日8割、数2割で文科Ⅱ類に合格。
これまでに1000人以上の受験生を指導。 
直近2年で偏差値70超の学校への合格率が90%を超えている。

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講義:人獣共通感染症の発生件数が増加した要因

1:グローバル化の進展

グローバル化とは交通や情報技術の発達、市場の広がりにより地球規模での人や物の移動が活発化し、世界の経済や文化が均質化する現象を指します。
これには国際的な貿易、旅行、金融活動、文化交流が含まれます。

旅行や貿易の増加

①国際旅行の増加
航空輸送が発達し、国際的な旅行が容易になった結果、感染症が地理的境界を越えて広がりやすくなりました。

②国際貿易の拡大
貿易の活発化に伴い、製品が異なる国々に輸送されて感染症の地理的な拡散を助長しました。

航空輸送の発展

世界中で航空輸送網が拡充され、航空機による移動が大幅に増加しました。
これにより、感染症の潜伏期間中に国境を越えることが可能になって感染症が拡散するリスクが高まっています。

2:地球温暖化

①感染症媒介生物の分布の変化

地球温暖化は感染症媒介生物(蚊やダニなど)の生息域を拡大させ、人間との接触機会を増やしています。
地球温暖化により気温が上昇することで、熱帯地域に限られていた感染症媒介生物が温帯地域にも進出しています。このため、マラリアやデング熱のような熱帯特有の感染症が新しい地域で発生しています。

②気象災害の増加

地球温暖化は洪水や干ばつ、台風といった気象災害を頻発させて衛生環境を悪化させます。
これにより、感染症が拡大しやすい条件が整います。

・洪水の影響
洪水によって汚水が広がることで、不衛生な環境が生まれます。
このような状況では、コレラや赤痢などの水系感染症が発生しやすくなります。
また、洪水で蚊の繁殖地が増え、蚊を媒介とする感染症のリスクも高まります。

・干ばつの影響
干ばつが続くと清潔な水の供給が困難となり、不衛生な環境が広がります。
この結果、下痢症や細菌感染症の発生が増加します。

・公衆衛生の悪化
異常気象により衛生インフラ(上下水道、医療施設など)が損傷を受けることで感染症予防が困難になり、病気が蔓延する可能性が高まります。

3:畜産物の需要増加と畜産業の拡大

新興国の経済成長に伴い食生活が西欧化し、肉類や乳製品の消費量が増加しています。
これにより、畜産物の需要が世界的に拡大しています。

増大する需要に応えるため、畜産業は集約化・大規模化が進みました。
このような施設では動物が高密度で飼育されているため、感染症が発生すると迅速に動物間で拡散するリスクが高まります。

4:人と野生動物との接触機会の増加

鉱山開発

鉱山開発では大規模な土地の掘削が行われるため、動物たちの生息環境が破壊されます。
その結果、人間がこれまで接触することのなかった野生動物やその病原体と直接的に接触する可能性が高まります。

都市開発

都市化が進み、都市が郊外へ拡大することで人間の生活圏と野生動物の生息域が近接する状況が増えています。
このような環境では、野生動物を媒介とする感染症が広がりやすくなります。

5:都市化による人口密集と医療・公衆衛生の不備

都市化の進展と人口密集

多くの人々が仕事や教育を求めて大都市に移住し、都市の人口密度が高まりました。
特に発展途上国では急速な都市化が顕著であり、都市部の住環境が過密化しています。

過密な住環境では、人と人との接触が増えるため、感染症が広がりやすい状況が形成されます。

インフラ整備の遅れ

急速な都市化が進む地域では、上水道や下水道、ゴミ収集などのインフラ整備が人口増加に追いついていません。
不衛生な環境が形成されることで、感染症の発生リスクが高まります。

特にスラムや貧困地域では衛生的なインフラが整っておらず、感染症の蔓延が顕著です。

医療・公衆衛生の不備

発展途上国の急速な都市化においては、医療施設や医療従事者の数が人口増加に追いついていません。
そのため、予防接種や治療を受ける機会が限られ、感染症が拡大しやすくなります。

発展途上国では、公衆衛生サービスや感染症の予防・管理体制が不十分です。
例えば、ワクチンの普及率が低い地域では感染症が流行する可能性が高くなります。

医療品の流通体制が整っていない地域では感染症が発生しても迅速な対応が難しく、ワクチンや薬品の供給が遅れるため被害が拡大しやすくなります。

解答例

(1)
グローバル化の進展による人やモノの移動の活発化

(2)
蚊などの感染症媒介生物の生息域を拡大させ、洪水や干ばつなどの気象災害の頻発化や大規模化により公衆衛生を悪化させる。
(57文字)

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