2023年の東大地理第3問設問B(1)では、「北海道・東京都・富山県・沖縄県の1世帯あたり人員数と1住宅当たり居住室数」に関する問題が出題されました。
この記事では、北海道・東京都・富山県・沖縄県について以下のを詳しく解説します。
- 主な産業と1人あたりGDPの水準
- 合計特殊出生率
- 1世帯当たり人員数
- 1住宅当たり居住室数
この記事を通して、北海道・東京都・富山県・沖縄県の特徴を理解しておきましょう。
資料の読み取り:図3-2
図3-2は、横軸に2018年の都道府県別の1世帯当たり人員数を、縦軸に同年の1住宅当たり居住室数を示したものであり、A、B、C、Dは北海道、東京都、富山県、沖縄県のいずれかです。
D:東京都
・1世帯あたり人員数が最も少ない
東京都では単身世帯や核家族が多いことから、1世帯あたりの人員数が全国で最も少ないです。
・1住宅あたり居住室数が最も少ない
東京都は地価が非常に高く、小規模な住宅やワンルームマンションが多いことが影響しています。
結論:Dは東京都と判断できます。
一番選びやすい選択肢なので、一番はじめに解説します。
1世帯当たり人員数が最も少ない⇒核家族や単身者が多い東京都
1住宅当たり居住室数が最も少ない⇒過密化の進行で地価が高くなっており、1住宅の広さが狭い東京都
C:北海道
・1世帯あたり人員数が少ない(Dに次ぐ低水準)
北海道では、大都市である札幌市を中心に単身世帯や核家族が増加しています。
また、農村部では高齢化が進み、単身高齢者世帯が増加していることも影響しています。
・1住宅あたり居住室数が少ない
北海道では冬の暖房費を抑えるため、居住室数を少なくして住宅全体をコンパクトに保つ設計が多くみられます。
結論:Cは北海道と判断できます。
B:沖縄県
・1世帯あたり人員数の割に1住宅あたり居住室数が少ない
沖縄県は合計特殊出生率が全国的に高く、家族世帯が多いため1世帯あたり人員数は多めです。
しかし、所得水準が低いため、居住室数が確保できない住宅事情が見られます。
結論:Bは沖縄県と判断できます。
A:富山県
・1世帯あたり人員数が多い
富山県は三世代同居など伝統的な家族形態が多く、1世帯あたり人員数が全国平均を上回る傾向にあります。
・1住宅あたり居住室数が多い
戸建て住宅が多く、広い住環境を確保できる地域です。
また、土地価格が比較的安いため、居住室数の多い住宅を建てやすい環境があります。
結論:Aは富山県と判断できます。
講義
1世帯あたり人員数
1世帯あたり人員数は1つの世帯を構成する平均人数を示す指標であり、以下のような地域特性や社会要因を反映しています。
家族構成の違い
地域によって核家族や単身世帯が多い都市部、三世代同居などの大家族が残る地方部など世帯の形態が異なります。都市化が進むほど核家族化や単身世帯が増加する傾向があります。
人口動態の影響
地域の若年層や高齢者人口の割合によっても変動します。
若年層が多い地域では夫婦や子どもを含む家族世帯が多くなり、1世帯あたり人員数が高くなります。
一方、高齢化が進んだ地域では、高齢者の単独世帯が増え、1世帯あたり人員数が低下します。
都市化の進展
大都市部では住環境の制約や仕事の都合により、単身世帯が増加します。
これにより、1世帯あたり人員数が小さくなりやすい特徴があります。
1住宅あたり居住室数
1住宅あたり居住室数は、1つの住宅にある居住可能な部屋の平均数を示し、以下の要因がその数値を左右します。
住宅事情と住環境
都市部では地価が高いため、小規模な集合住宅が主流となり、居住室数が少ない傾向があります。
一方、地方では土地が広いため、戸建て住宅で部屋数を多く確保しやすい環境が整っています。
住民の収入と住宅の広さ
所得水準が高い地域では、広い住宅に住む傾向があります。
逆に、所得水準が低い地域では住宅が狭く、居住室数も少ない場合があります。
生活スタイルと文化的背景
地域によって生活スタイルや文化が異なるため、住宅の設計や間取りにも影響が出ます。
たとえば、寒冷地域では暖房効率を重視して部屋数を抑える設計がされることがあります。
北海道
経済の基盤
北海道は広大な土地を活かし、農業、酪農、漁業が主要な産業となっています。
しかし、工業や先端産業の集積が進んでおらず、経済的な基盤が農業中心であることから1人あたりGDPは全国平均を下回る傾向があります。
出生率と人口動態
北海道の合計特殊出生率は全国平均を下回る水準にあります。
広大な土地を持つ一方で、人口は札幌市をはじめとする都市部に集中しています。
都市部では未婚化・晩婚化が進み、地方部では人口減少や高齢化が顕著です。
このような状況が出生率低下の要因となっており、特に札幌市などの都市部では少子化が顕著です。
一方、地方部では若者の流出が進み、高齢者の単独世帯が増加しています。
1世帯あたり人員数の少なさ
都市部の札幌市では核家族化が進んでおり、一人暮らしや夫婦のみの世帯が多く見られます。
また、地方部では高齢化の進行により単独世帯や高齢者のみの世帯が増加しています。
これらの傾向が重なり、1世帯あたり人員数は全国平均を下回る結果となっています。
特に、都市部での核家族や単身世帯の増加が、世帯あたり人員数の減少に大きく寄与しています。
1住宅あたり居住室数の少なさ
北海道の住宅事情は厳しい寒冷気候の影響を受けています。
断熱性や暖房効率を重視した住宅設計が一般的で、建物全体がコンパクトに設計される傾向があります。
このため、部屋数を増やすよりも暖房効率を重視した間取りが選ばれることが多く、1住宅あたり居住室数が多くならない理由の一つです。
また、札幌市を中心とした都市部では集合住宅の割合が高く、これらの住宅は一般的に居住室数が少ない傾向があります。
都市部では経済的負担を軽減するために比較的小規模な住宅が選ばれがちです。
東京都
日本経済の中心地としての役割
東京都は日本の首都であり、経済活動の中心地として多様な高付加価値産業が集中しています。
金融、情報通信、先端技術、エンターテインメントといった分野が集積し、国内大企業の本社が多く所在しています。
このため、1人あたりGDPは日本国内で最も高い水準を誇り、国際的なビジネスの拠点としても重要な役割を果たしています。
高い生活コストと低い合計特殊出生率
東京都は日本で最も人口が多い一方で、合計特殊出生率は全国で最低水準です。
都市化が進む中で、住宅費などの生活コストの高さが子育て世帯に大きな負担を与えています。
また、都心部の住環境が子育てに必ずしも適していないことや、子育て世代が郊外や他県に流出する傾向も出生率の低下につながっています。
1世帯あたり人員数の特徴
東京都は日本で最も都市化が進んでいるため、1世帯あたり人員数が全国で最も少ない水準にあります。
特に単身世帯や夫婦のみの世帯が多く、若い世代の一人暮らしが目立ちます。
こうした傾向は、就業機会を求めて地方から上京する若者の存在が背景にあります。
1住宅あたり居住室数の少なさ
東京都は土地価格が非常に高いため、1住宅あたり居住室数が全国で最も少ない傾向にあります。
限られた土地を効率的に利用するため、小規模な住居やワンルームマンションが主流となっています。
これにより、住宅の広さが制限される傾向が顕著です。
富山県
製造業を中心とした効率的な経済構造
富山県は製造業が主要産業であり、特に化学工業、機械工業、医薬品製造業など高付加価値産業が盛んです。
これにより、1人あたりGDPは全国平均を上回ることが多く、効率的な経済構造を持つ地域として知られています。
人口規模は小さいものの、産業の生産性の高さが県全体の経済を支えています。
比較的高い出生率を維持
富山県は比較的高い合計特殊出生率を維持しています。
これは、地方都市として広い住環境や家族支援策が整っていること、地元企業の支援や地域コミュニティの強さが、子育て世代を支える要因となっているためです。
また、地元に定住する傾向が強く、教育や医療の充実が出生率の高さを支えています。
このような環境により、富山県は他地域に比べて子育てに適した地域として評価されています。
1世帯あたり人員数が多い理由
富山県では1世帯あたり人員数が全国平均を上回る傾向があります。
その背景には、三世代同居などの伝統的な家族形態が比較的残っていることが挙げられます。
富山県では古くからの地域社会が根付いており、家族間のつながりが強い傾向があります。
また、持ち家率が高く広い住居を持つ家庭が多いことも、1世帯あたりの人員数が多い理由として挙げられます。
1住宅あたり居住室数が多い背景
富山県は全国的にも1住宅あたり居住室数が多い地域の一つです。
これには以下の理由があります。
・戸建て住宅の割合が高い
富山県では戸建て住宅が主流であり、広い間取りの家が一般的です。
土地の価格が比較的安いこともあり、広い住宅を建てやすい環境が整っています。
・三世代同居の文化
富山県では三世代同居が根付いていることから、家族構成に応じて多くの居住室を持つ住宅が多く見られます。
こうした文化的背景が、1住宅あたり居住室数の多さに寄与しています。
沖縄県
観光業を中心とした経済構造
沖縄県は観光業を基盤とする地域経済を特徴としています。
観光業は地域経済に大きく貢献し、多くの雇用を生み出していますが、労働集約型の産業構造となっています。
その結果、1人あたりの生産性は全国平均を下回り、所得水準も低い傾向があります。
また、製造業などの高付加価値産業が少なく、物流コストの高さや島嶼性に起因する地理的な制約が経済成長の障壁となっています。
これにより、県外からの企業誘致や工業の発展が限定的となっており、離島地域では経済活動がさらに制約を受けています。
日本国内で最も高い合計特殊出生率
沖縄県は全国で最も高い合計特殊出生率を誇っています。
地域社会の連帯感が強く、伝統的な家族観や子供を持つことに対するポジティブな価値観が根付いていることがその要因です。
さらに、若年層の人口割合が多いことも出生率を押し上げる一因となっています。
しかし、近年では全国的な少子化の影響を受け、かつての水準からは低下傾向にあります。
それでも全国平均と比較すると依然として高い水準を維持しています。
1世帯あたり人員数が抑えられる要因
沖縄県では伝統的に三世代同居や大家族の文化が根付いていましたが、近年では都市化の進展により核家族化が進んでいます。
特に那覇市を中心とした都市部では、観光業やサービス業を支える若年層が単身で生活するケースが増加しています。
また、住宅事情やライフスタイルの変化により三世代同居が減少し、独立した家庭を持つ若い世代が増えていることも、1世帯あたり人員数を抑える要因となっています。
さらに、沖縄県は離婚率が全国的に高い傾向があり、これによりひとり親世帯や単独世帯が増加している点も平均人員数を引き下げています。
1住宅あたり居住室数が少ない背景
・都市部の土地価格の高騰
那覇市を中心とした都市部では土地価格が高騰しており、集合住宅や小規模な住宅が多く建設されています。
このため、1住宅あたり居住室数が少なくなる傾向があります。
・所得水準の低さ
沖縄県の所得水準は全国平均を下回るため、住宅に十分な資金を投じることが難しい家庭が多いです。
その結果、比較的安価で部屋数の少ない住宅が選ばれることが一般的です。
・観光業の影響
観光業が盛んな沖縄では、観光客向けの賃貸住宅や簡易宿所が増加しています。
これらの住宅はコンパクトな設計が主流であり、地域全体の平均居住室数を押し下げる要因となっています。
・土地利用の効率化
島嶼県である沖縄は利用可能な土地面積が限られています。
このため、都市部やその周辺地域では土地利用の効率化が求められ、住宅がコンパクトに設計される傾向があります。
解答
Aー富山県、Bー沖縄県、Cー北海道、Dー東京都