ラテン帝国の成立経緯/東大世界史2024第2問・問2(b)

世界史

「ラテン帝国の成立経緯がわからない」
「13世紀初めにイスタンブールの地に建てられた国家がどこかわからなかった」

東京大学は2024年度入試において、世界史第2問の問2(b)で
13世紀初めにイスタンブールに建てられた国家の成立の経緯を2行説明させる問題を出題しました。

この問題に正解するには
①13世紀初めにイスタンブールに建てられた国家がラテン帝国だと知っている
②ラテン帝国の成立の経緯を知っていて、60字前後で述べることができる
この2つの条件をクリアする必要があります。

現在のイスタンブールと呼ばれる地には、これまで様々な民族や国家が関わってきました。
特定の時代のイスタンブールの様子を問われると混乱してしまうかもしれませんね。

しかし、安心してください。
この記事では数多くの方に世界史を教えてきた私が、イスタンブールの歴史やラテン帝国の成立経緯に関する疑問を解決します。

執 筆 者
諏訪孝明

東京大学経済学部卒
1浪・東大模試全てE判定・センター7割台の崖っぷちから世9割、日8割、数2割で文科Ⅱ類に合格。
これまでに1000人以上の受験生を指導。 
直近2年で偏差値70超の学校への合格率が90%を超えている。

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講義

イスタンブールの歴史

今回の問題は、「13世紀初めにイスタンブールの地に建てられた国家」の名称を特定する必要があります。
そこで、イスタンブールの歴史を成立時点までさかのぼって確認します。

紀元前7世紀頃

古代ギリシア人が植民市ビザンティオンを建設します。

理由:ポリスの成立と発展により社会が安定するに伴いギリシア本土で人口が増加し、土地が不足したから。

4世紀

この頃、ビザンティオンはローマ帝国領でした。
ローマ帝国の言語、つまりラテン語ではビザンティウムと呼ばれていました。
330年にコンスタンティヌス帝が首都をローマからここへ移します。
そして、ビザンティウムをコンスタンティノープルへと改称します。

理由
①コンスタンティノープルが東西の交通の要衝だったから。
②ローマには、彼が公認し統治に利用しようとしたキリスト教と敵対する伝統宗教の勢力が多くいたから。

これにより、ローマ帝国の中心地が経済的にも軍事的にも東方へ移動しました。

13世紀初め

遷都後、この地はローマ帝国⇒東ローマ帝国(ビザンツ帝国)が支配します。
しかし13世紀初め、第4回十字軍がコンスタンティノープルを占領してラテン帝国を建国します。
ビザンツ帝国は一時的に中断することとなります。(中断期間は50年間くらいです)

15世紀半ば

一時的な中断を経てビザンツ帝国は復活します。
しかし、オスマン帝国のメフメト2世がビザンツ帝国の都であるコンスタンティノープルをたびたび攻撃し、
1453年に陥落させます。
これをもってビザンツ帝国は滅亡となりコンスタンティノープルはイスタンブールと改称されてオスマン帝国の首都となります。

19世紀末

ドイツのヴィルヘルム2世が中東への進出を狙って3B政策をとり、オスマン帝国からイスタンブールを経て中東に至るバグダード鉄道の敷設権を獲得します。
4世紀には交通の要衝であったこの地が19世紀末においても交通の要衝であり続けていたことを示すエピソードです。

その後現在までのイスタンブール

1923年にオスマン帝国の滅亡・トルコ共和国が成立し、アンカラを首都としました。
そのため、イスタンブールは一国の首都ではなくなってしまいます。
しかし、今なおトルコ共和国の最大都市であり続けています。

第4回十字軍

ラテン帝国の成立に大きく関わっている第4回十字軍について詳しく見ていきましょう。
以下のエピソードは暗記する必要はありません。
読みたい人だけ読んでください。

第4回十字軍はローマ教皇インノケンティウス3世が提唱しました。
インノケンティウス3世の目的はアイユーブ朝に奪われた聖地イェルサレムの奪回でしたが、事態はまったく別の方向に動いてしまいます。

十字軍兵士はヴェネツィアに集まります。
ヴェネツィアが用意した船に乗ってアイユーブ朝を攻撃するためです。
しかしながら運搬費用の金額でもめてしまいます。
そうしたなかで、ビザンツ帝国の前国王の息子から「父から皇位を奪った現皇帝から皇位を再度奪い返したい。報酬は支払う。」という申し出がありヴェネツィア商人はこれを了承します。
ヴェネツィアにとってこれは地中海貿易による利益拡大のチャンスだったからです。
そして、第4回十字軍はヴェネツィアの船に乗ってコンスタンティノープルへ向かい、そこを攻撃して略奪。
ラテン帝国を建国します。

以上、エピソードでした。
ここからは、暗記必須の話に戻ります。

第4回十字軍はローマ教皇インノケンティウス3世の提唱によりヴェネツィア商人主導で行われました。
そしてビザンツ帝国の都コンスタンティノープルを占領しラテン帝国を建国します。
ビザンツ帝国は一時中断となりました。

ここまでのまとめ

イスタンブールの歴史についてまとめておきます。

答案作成

ここまでの情報を活かして答案を作成してみましょう。

字数を気にせず書いてみる

ローマ教皇インノケンティウス3世が提唱した第4回十字軍がヴェネツィア主導でビザンツ帝国の首都コンスタンティノープルを占領してラテン帝国が建国された。
74文字です。
多いので減らしましょう。

字数調整

ローマ教皇インノケンティウス3世が提唱した第4回十字軍がヴェネツィア主導でビザンツ帝国の首都コンスタンティノープルを占領してラテン帝国が建国された。
63字になりました。

インノケンティウス3世も重要人物ではありますが、ここでは「提唱者・インノケンティウス3世」よりも「主導した都市国家・ヴェネツィア」のほうが重要と考え、提唱者を削除することにしました。
「ローマ教皇が提唱した」の箇所まで削除すると今度は文字数が少なくなりすぎるので、削るのは人物名のみとしました。

解答例/この記事のまとめ

今回の解答例は

ローマ教皇が提唱した第4回十字軍がヴェネツィア主導でビザンツ帝国の首都コンスタンティノープルを占領してラテン帝国が建国された。

とします。

東大世界史2024世界史解説記事リンク一覧
・大問1問1   https://ronjyutu-taisaku.com/todai-2024-1-1/
・大問1問2   https://ronjyutu-taisaku.com/todai-2024-1-2/
・大問2問1(a)https://ronjyutu-taisaku.com/todai-2024-2-1-a/
・大問2問1(b)https://ronjyutu-taisaku.com/todai-2024-2-1-b/
・大問2問2(b)この記事です
・大問2問2(c)https://ronjyutu-taisaku.com/todai-2024-2-2-c/
・大問2問3(a)https://ronjyutu-taisaku.com/todai-2024-2-3-a/

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