【東大地理2023】中国の淡水域、インドネシアの汽水域、ノルウェーの海水域で養殖されている代表的な水産物と養殖が行われる場所の地形・生態環境|第2問設問A(3)

東大地理2023第2問設問A(3)中国の淡水域、インドネシアの汽水域、ノルウェーの海水域で主に養殖されている水産物と養殖する場所の地形・生態環境 地理

2023年の東大地理第2問設問A(3)では、中国・インドネシア・ベトナムの淡水域、インドネシア・ベトナムの汽水域、チリ・ノルウェーの海水域での養殖における代表的な水産物と養殖が行われる場所の地形・生態環境に関する問題が出題されました。

この記事では、以下のポイントを詳しく解説します。

  • 中国の水産業と淡水域の養殖
  • インドネシアの水産業と汽水域の養殖
  • ノルウェーの水産業と海水域の養殖

この記事を通じて、それぞれの国で養殖が行われる背景と、その地形や生態環境の重要性を理解しましょう。

執 筆 者
諏訪孝明

東京大学経済学部卒
1浪・東大模試全てE判定・センター7割台の崖っぷちから世9割、日8割、数2割で文科Ⅱ類に合格。
これまでに1000人以上の受験生を指導。 
直近2年で偏差値70超の学校への合格率が90%を超えている。

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講義

中国、インドネシア、ノルウェーの水産業について解説します。
ア国であるベトナム、ウ国であるチリの水産業については以下の記事で解説しております。
【東大地理2023】韓国、ベトナム、チリの養殖業の特色|第2問設問A(1)
こちらも是非ご覧ください。

中国の水産業:内水面養殖業の発展と特徴

中国は世界有数の漁業大国であり、特に近年の漁業生産量の伸びは 養殖業 によるものが大きいです。
中国の水産業の特徴は、以下の点に集約されます。

1:養殖業が支える漁業大国

1990年代後半以降、中国の漁業生産量は大幅に増加しました。
その要因の一つが 内水面養殖業の発展 です。

漁業生産の成長要因
①国内需要の増加: 経済成長に伴う国民所得の向上により、国内での水産物需要が急増。
②輸出市場の拡大: 日本をはじめとした輸出向けの水産物生産が増加。

2:中国の内水面養殖業の特徴

・地形と環境の適正
中国には黄河や長江などの大河川のほか、無数の湖沼が広がっています。
これらの水域の沿岸部や田畑周辺には、大規模から小規模までの 養殖池が広く点在しています。

・養殖対象となる水産物
コイ科の淡水魚が中心。
多様な種類の淡水魚が養殖され、国内消費用と輸出用に供給されています。

・技術の発展と政府支援
養殖技術の発展と政府による内水面養殖業の積極的な支援が生産拡大の一因となっています。

インドネシアの水産業:汽水域養殖の発展と課題

インドネシアは豊かな自然環境を活かして、水産業が発展している国の一つです。
そのなかでも、 汽水域養殖 を中心とした水産物生産は国内外の需要を支える重要な産業となっています。
一方で、その発展には環境問題や農地消失といった課題も伴っています。

1:汽水域での養殖業の特徴

・汽水域とマングローブ林
汽水域とは、海水と淡水が混ざり合う河口付近の水域を指します。
インドネシアでは、こうした環境が潮間帯に広がっています。
インドネシアの沿岸部には、マングローブ林が広く分布しています。
マングローブ林は、海岸を保護して豊かな生態系を育む重要な役割を果たしていました。

・えび養殖池の造成
マングローブ林を伐採し、その土地に養殖池を造成して輸出用のえび養殖を行っています。

2:輸出産業としてのえび養殖

インドネシアで生産されたえびは、その多くが 日本や欧米諸国に輸出 されています。
日本国内では和食や洋食、中華料理などでえびの需要が高いですが、消費されるえびの 約9割を輸入に依存しています。
冷凍技術の発展や国際的な流通網の整備により、新鮮なえびを効率的に輸出できるようになりました。

3:環境問題と持続可能性

インドネシアでは、過去20〜30年の間にマングローブ林の大規模な乱伐が進みました。
その最大の要因はえび養殖池の開発です。
生産量が低下した養殖池は放置されることが多く、次々と新たなマングローブ林が伐採されて養殖池になっています。

そのため、マングローブ林の保全と持続可能な養殖業を両立するための取り組みが求められています。
例えばエコラベル認証の導入による環境負荷の低減が図られています。
これは、水産資源や生態系などにやさしい方法で漁業を行う業者がラベルを取得することでその事実を消費者に伝え、消費者が水産物を購入する際の判断材料にしてもらう仕組みです。

ノルウェーの水産業:伝統と持続可能性の両立

ノルウェーはヨーロッパ有数の漁業国であり、水産業が国の経済において重要な役割を果たしています。
歴史的背景や自然環境、そして政策の変化による持続可能な漁業への転換が、現在のノルウェーの水産業を支えています。

1:地形と自然環境による漁業の発展

・地形の特徴
山脈が海岸線付近まで迫る地形のため、平地が少なく農業に適していません。
その結果、古くから漁業が生活基盤として発展しました。
フィヨルド(氷河によって形成された入り江)は波が穏やかで水深が深く、養殖業に最適な環境を提供しています。

・好漁場の存在
ノルウェーの海域には、バンクや潮目が多く存在します。
バンクや潮目はプランクトンが多く発生するため魚の繁殖に適しており、好漁場を形成します。
バンク:大陸棚にある比較的高まりのある隆起部
潮目:異なる海流がぶつかり、栄養塩が豊富になる場所

2:漁業政策の転換

・漁業の危機と政策転換
政府による漁業への多額の補助金により、1970年代には過剰な労働力と設備投資による乱獲が原因で漁獲量が大幅に減少しました。
ノルウェー政府はこの状況に対応するため、1970年代後半に漁業政策を大きく転換 しました。
①漁獲量規制を導入し、資源の持続可能性を確保しました。
②補助金の見直しにより、効率的な漁業への移行を促しました。

・養殖業の振興
漁業政策の一環として、フィヨルドを利用したサケやマスの養殖を推進しました。
フィヨルドの特性を活かした大規模な養殖場が整備され、養殖業がノルウェーの水産業の中核に成長しました。
加工・流通設備の整備により、漁獲や養殖された魚を効率的に輸送可能となりました。
コールドチェーン技術の発展により、鮮度を保ちながら輸出する仕組みが確立されています。

3:輸出市場の拡大

ノルウェーの魚介類の輸出先は EUが過半数を占めています。
高品質で収益性の高い魚を漁獲・養殖することで、EU市場での競争力を高めています。

ノルウェー産のサケ・マスは、日本でも人気の輸入品です。
寿司や刺身用の新鮮な魚介類として消費者から高い評価を得ており、日本市場への輸出が拡大しています。

解答

Aーこい、湖
Bーえび、マングローブ林
Cーサケ、フィヨルド

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