【東大地理2023】1990年~2020年にかけて全世界の水産物の養殖生産量に著しい増大がみられた背景|第2問設問A(2)

東大地理2023第2問設問A(2)全世界の水産物の養殖生産量に著しい増大がみられた背景(需給両面) 地理

2023年の東大地理第2問設問A(2)では、「1990年~2020年にかけて全世界の水産物の養殖生産量に著しい増大がみられた背景」を、水産物の需要・供給の両面に注目して2行(約60文字)で説明する問題が出題されました。

この記事では、次のポイントを詳しく解説します。

  • 養殖業とはなにか
  • 養殖業が盛んになっている需要面の理由
  • 養殖業が盛んになっている供給面の理由
執 筆 者
諏訪孝明

東京大学経済学部卒
1浪・東大模試全てE判定・センター7割台の崖っぷちから世9割、日8割、数2割で文科Ⅱ類に合格。
これまでに1000人以上の受験生を指導。 
直近2年で偏差値70超の学校への合格率が90%を超えている。

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講義:養殖業

養殖業とは何か

養殖業とは、水産物を人工的に育成する漁業を指します。
採卵から漁獲までのすべてを人工的に管理し、稚魚や稚貝をいけすや養殖場で育成する方法です。
以下の2種類に大別されます。

  • 内水面養殖業:河川や湖沼で行う養殖(例:ウナギ、コイ)
  • 海面養殖業:海洋で行う養殖(例:カキ、ノリ、サーモン)

養殖業は、従来の天然資源を利用した「とる漁業」に代わって持続可能な水産業として発展してきました。

養殖業が盛んになっている理由①需要面

先進国では、健康志向の高まりが顕著で、低脂肪・高タンパクの食品として魚介類が注目されています。

新興国では経済が発展し、所得水準が向上しています。
特に、伝統的に魚食文化の強いアジアでは魚介類の需要が急増しています。

養殖業が盛んになっている理由②供給面

漁獲量の伸び悩み

漁場での漁獲量が伸び悩んでいます。
理由は主に以下の2つです。

  • 乱獲:漁場の拡大と漁業技術の向上により、一部の漁場で水産資源が過剰に利用された。
  • 乱獲規制:持続可能な漁業を目指す国際的な取り組みとして、乱獲に対する規制が強化された。

乱獲規制の例としては、国際条約による漁業権の制限や水産資源の管理措置があります。

漁獲量の伸び悩みや乱獲規制により、「とる漁業から育てる漁業へ」という流れが加速しました。
養殖業は水産資源に負荷をかけず、安定的な供給を可能にする持続可能な選択肢として注目されています。

養殖技術の発展

養殖技術の発展により養殖業の生産性が向上しました。
以下、代表的な例を挙げます。

  • 水質管理技術の高度化
  • 病気対策技術の進歩
  • 養殖対象種の拡大

輸送技術の発展

コールドチェーン(低温物流)の整備などの輸送技術の発達により、養殖水産物がより広範囲で取引可能になりました。

生産地から遠隔地や海外市場への流通が円滑化し、輸送中の鮮度維持が可能になって国際取引が活発化しました。
そのため、輸出用養殖業が発展し、水産物が輸出品として一部の国において重要な産業となりました。
例えば、チリのサーモン養殖やベトナムのエビ養殖がそれに該当します。

解答例

健康志向の高まりや生活水準向上で需要が増えているが、漁獲量は増えていない。また、養殖や輸送技術の発達で貿易が拡大した。
(59文字)

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