【東大地理2023】インド北部で年間を通して見られる大気汚染物質の発生源とそれが特に毎年6月から9月にかけてヒマラヤ山脈の中腹にまで達する理由|第1問設問B(3)

東大地理2023第1問設問B(3)インド北部の大気汚染物質の発生源とそれが毎年6~9月にヒマラヤ山脈の中腹にまで 達する理由 地理

2023年の東大地理第1問設問B(3)では、「インド北部で発生する大気汚染物質が特に毎年6月から9月にかけてヒマラヤ山脈の中腹にまで達する理由を、年間を通して見られる汚染物質の発生源と気候条件に関連させて2行(約60文字)以内で述べよ」という問題が出題されました。

この記事では、次の2つの点について詳しく解説します。

  • インドに吹くモンスーン(季節風)の特徴
  • インドで発生する大気汚染

これらを理解することで、インド北部で発生する大気汚染物質が夏はヒマラヤ山脈の中腹にまで達する理由を理解しましょう。

執 筆 者
諏訪孝明

東京大学経済学部卒
1浪・東大模試全てE判定・センター7割台の崖っぷちから世9割、日8割、数2割で文科Ⅱ類に合格。
これまでに1000人以上の受験生を指導。 
直近2年で偏差値70超の学校への合格率が90%を超えている。

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講義:インド北部の大気汚染とモンスーンの影響

1:インドのモンスーン(季節風)

南アジアは季節風(モンスーン)の影響を強く受ける地域であり、夏と冬で風向きが大きく異なります。

夏:南西モンスーン

夏にはインド洋が高圧部、インド北部やヒマラヤ山脈付近が低圧部となり、インド洋から湿った南西季節風が吹き込みます。

この風は海からの湿潤な空気を大量に運び、インド全土に多くの降水をもたらします。
また、この強い風がインド北部の都市や産業地域で発生した大気汚染物質(PM2.5、硫黄酸化物、窒素酸化物など)を北方に運び、ヒマラヤ山脈の中腹にまで拡散させます。

冬:北東モンスーン

冬はユーラシア大陸に発達するシベリア高気圧が原因で北東季節風が吹き、乾燥した冷たい空気がインドに流れ込みます。

この時期の風は海からの湿潤な空気を運ばないため、降水量が少なく乾燥した天候が続きます。

2:インド北部の大気汚染の現状と要因

①大気汚染とは

大気汚染は、人間の健康や環境に悪影響を及ぼすほどに大気中の微細な粒子や有害な気体成分が増加する現象です。このような汚染物質は、主に化石燃料(石炭、石油、天然ガスなど)の燃焼によって発生します。
これにより発生する代表的な大気汚染物質には、硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)、微小粒子状物質(PM2.5)などがあります。
これらの物質は、健康被害(呼吸器系疾患や心疾患など)を引き起こす要因となります。

②工業化と大気汚染の進行

産業革命以降、世界各地で工業化が進むにつれて化石燃料の使用が急増しました。
その結果、発電所や工場、自動車などから大量の排ガスが発生し、大気汚染が深刻化しています。
現在は急速な経済発展を遂げている新興国で環境対策が不十分なまま工業化や都市化が進むため、大気汚染が急速に悪化しています。

③インド北部における大気汚染の主な要因

インド北部では、経済成長に伴い、化石燃料を燃焼することで発生する大気汚染物質の排出が増加しています。
その主な発生源として以下が挙げられます。

・工場・産業施設
工場や石炭火力発電所が多く稼働しており、これらから大量の煤煙が排出されます。
石炭には硫黄成分が含まれているため、燃焼により硫黄酸化物が発生します。

・自動車の排ガス
インドの都市部では自動車が急増しており、排ガスから窒素酸化物やPM2.5が大量に発生しています。
これにより、都市部では呼吸器疾患の増加などの健康被害が生じています。

・農業廃棄物の野焼き
農村地域では収穫後に麦わらや稲わらを野焼きする習慣があり、これも大気汚染の一因となっています。
特に収穫期の秋から冬にかけて野焼きによる煙が周囲に広がり、大気汚染が悪化します。

④デリーにおける大気汚染の深刻化

インド北部の大都市デリーでは、大気汚染が特に深刻な問題となっています。
デリーは周囲に高地があるため盆地となっており、排ガスが滞留しやすい地形です。
このため、特に夏と比べて風が弱い冬季には汚染物質がデリーにとどまり、大気が淀んでしまいます。
その結果、PM2.5の濃度が上昇し、視界不良や健康被害が増加します。

解答例

インド北部の都市で工場、自動車、石炭火力発電所などから発生する大気汚染物質が夏の南西季節風に吹かれて運ばれるから。
(57文字)

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