【東大地理2023】バングラデシュで大量に発生している温室効果ガスとその原因となる農作物|第1問設問B(1)

東大地理2023第1問設問B(1)バングラデシュで農作物の生産により大量発生する温室効果ガス 地理

2023年の東大地理第1問設問B(1)では、バングラデシュで大量に発生している温室効果ガスとその原因となる農作物を問う問題が出題されました。
この問題では、バングラデシュの自然環境や農業の特性を理解したうえで温室効果ガスの発生源を考えることが求められます。

この記事では、以下のポイントを中心に解説します。

  • バングラデシュの自然環境と農業の概要
  • 温室効果ガスの種類と特徴

また、図1-2の読み取り方についても丁寧に解説しています。
この記事を読んで東大地理2023第1問設問Bの解法や関連知識を身につけましょう。

執 筆 者
諏訪孝明

東京大学経済学部卒
1浪・東大模試全てE判定・センター7割台の崖っぷちから世9割、日8割、数2割で文科Ⅱ類に合格。
これまでに1000人以上の受験生を指導。 
直近2年で偏差値70超の学校への合格率が90%を超えている。

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資料の読み取り:図1-2

設問で提示された図1-2(a)にはある温室効果ガスの大気中濃度の分布が示されており、バングラデシュとインドシナ半島北部で高濃度となっています。
これをもとに考えると、以下の点から「メタン」が発生していると推測できます。

・バングラデシュとインドシナ半島北部の共通点
両地域で共通して盛んな農作物は「米」であり、水田での稲作が行われています。
水田ではメタンが発生するため、温室効果ガスの候補としてメタンが浮上します。

・工業地帯の分布と二酸化炭素との対比
二酸化炭素は工業地帯での排出が多い傾向にありますが、図に示された分布ではインドの工業地帯と比べて農業地域での濃度が高くなっています。
したがって、対象となる温室効果ガスは工業で発生しやすい二酸化炭素ではなく、水田で発生しやすいメタンと判断できます。

講義

バングラデシュの自然環境と農業の特徴

バングラデシュでは、自然環境と地理的な特性が農業に大きな影響を及ぼしています。
ガンジス川とブラマプトラ川によって形成された肥沃なデルタ地帯を活かし、米やジュートなどの農作物が盛んに栽培されています。
しかし、自然環境に由来する課題も多く、地球温暖化の影響も含めた脅威にさらされています。
以下、バングラデシュの自然環境や農業の概要を見ていきましょう。

地理的特性と気候条件

・低平なデルタ地帯
バングラデシュの国土の大部分はガンジス川とブラマプトラ川によって形成された三角州(デルタ)地帯に位置しています。
この地域は河川の土砂が堆積した沖積平野であり、非常に肥沃な土壌に恵まれています。

・季節風(モンスーン)と洪水
バングラデシュは広範囲が低湿な土地であり、海抜が低いため洪水や高潮の影響を受けやすいのが特徴です。
モンスーンの影響を強く受けるため、雨季には大量の降雨があります。
この季節風の影響で大雨による洪水が頻発し、農地や居住地が被害を受けることも多いです。
また、インド洋で発生するサイクロンがもたらす高潮も国土に大きな被害を与えています。

・地球温暖化の脅威
バングラデシュは、地球温暖化による海面上昇の影響を受けやすい国でもあります。
低平な地形のため、将来的に海面上昇が進行すると国土の水没が懸念されています。

農業の発展と緑の革命

・耕地の多さ
バングラデシュは国土の約3分の2(67.6%)が耕地として利用されています。
デルタ地帯の肥沃な土壌は農業にとって理想的な環境を提供しており、稲作を中心とした農業が国の主要な産業のひとつです。

・緑の革命による農業生産の向上
1960年代以降、「緑の革命」と呼ばれる技術革新により、バングラデシュの農業生産が大幅に向上しました。
この革命的な取り組みには、高収量品種の導入や灌漑設備の整備、化学肥料・農薬の使用が含まれます。
これにより、バングラデシュでは乾季にも農業が可能となり、米の収穫量が飛躍的に増大しました。

・米の栽培
バングラデシュでは、気候条件と土地の特性を活かして、米が主要な作物として栽培されています。
水田を利用した稲作が広く行われ、雨季を利用した二期作も可能です。
米は国民の主食であり、ほとんどが国内で消費されています。

・ジュートの栽培
バングラデシュは、ジュートの主要な生産国でもあります。
ジュートは主に麻袋やロープに加工され、輸出品としても重要な位置を占めています。
ジュートの栽培は繊維産業の発展に貢献しています。
ジュートの生産・加工により、バングラデシュでは衣類や繊維品が主な輸出品となっています。

バングラデシュにおける温室効果ガスと農業

バングラデシュでは、稲作を中心とした農業活動がメタンの排出につながっています。
水田では、水中の微生物が有機物を分解する過程でメタンが発生します。
メタンは温室効果ガスの一つであり、二酸化炭素に比べて強力な温暖化効果を持つため地球温暖化への影響が大きいです。
温暖化が進むとバングラデシュのような低地の国々では洪水リスクがさらに高まるため、温室効果ガスの管理と農業の持続可能性が重要な課題です。

温室効果ガスの概要と種類

温室効果ガスは地球の表面温度を保つ重要な役割を果たしていますが、濃度が増加すると地球温暖化を引き起こす原因となります。
温室効果とは、地表から放射される赤外線を吸収して再び地表に戻すことにより地表温度を上昇させる現象です。
以下では、代表的な温室効果ガスとその特性について詳しく見ていきます。

二酸化炭素

・主な発生源
二酸化炭素は、石油や石炭といった化石燃料を燃焼する際に大量に発生します。
主な排出源は、自動車の排ガスや工場の排煙などの人為的な活動です。
大気中に含まれる温室効果ガスの中で最も量が多く、地球温暖化の主要な原因とされています。

・影響
二酸化炭素の濃度は工業化が進む国々や経済発展の著しい新興国で特に高く、中国、アメリカ、ロシア、日本などが主要な排出国となっています。
二酸化炭素は他の温室効果ガスと比べて大量に排出されるため地球温暖化に対する影響が大きく、削減が急務とされています。

メタン

・主な発生源
メタンは、湿地や水田、家畜の糞尿や消化過程(特に牛のゲップ)から発生します。
また、メタン生成菌による分解でも発生します。
湿地や水田のような酸素が乏しい環境では、微生物の働きによって有機物が分解されてメタンが生成されます。

・影響
メタンは二酸化炭素に比べて少量であっても強い温室効果を持っており、その温暖化効果は二酸化炭素の約25倍とされています。
そのため、少量のメタンでも地球温暖化に大きな影響を与えることがわかっています。

フロン類

・主な発生源
フロン類とは、塩素化やフッ素化されたメタンやエタンを含む化合物の総称です。
冷蔵庫やエアコンなどの冷媒として広く使用されてきましたが、その特性から環境中に排出されると長期間残留し、さまざまな影響を及ぼします。

・影響
フロン類は化学的に安定しているため、自然界で分解されにくく、長期間大気中に留まります。
一部のフロン類は光化学反応によってオゾン層を破壊し、地上に到達する有害な紫外線の量を増やしてしまいます。
このため、1987年のモントリオール議定書によりフロンガスの生産と使用が厳しく規制されました。
また、フロンは温室効果ガスでもあり、少量で強い温室効果を持ちます。

解答

メタン、米

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