2023年の東大地理第1問設問A(4)(5)では、1950年代以降に生産が急増したアルミニウム、コンクリート、プラスティックについての問題が出題されました。
この記事では、以下のポイントについて詳しく解説します。
- アルミニウムとアルミニウム工業の特徴
- コンクリートとセメント工業の特徴
- プラスティックと石油化学工業の特徴
- プラスチックがもたらす環境問題
また、図1-1の読み取り方についても丁寧に解説しています。
この記事を読んで東大地理2023第1問設問A(4)(5)の解法や関連知識を身につけましょう。
資料の読み取り:図1-1
図1-1では、3種類の物質(A、B、C)の積算生産量の変化が示されています。
グラフを読み解くポイントとして、それぞれの積算生産量のスケールと特徴から物質を特定します。
A:アルミニウム
- グラフの縦軸の数値が最も小さい(1~5億トン)
- アルミニウムは軽量で、航空機や自動車に多く使用されるため需要が増えた
- 以上から、Aがアルミニウムであると判断できる
B:コンクリート
- グラフの縦軸の数値が最も大きい(1000~5000億トン)
- コンクリートは建築やインフラ整備に欠かせない資材で、都市化が進むにつれて大量に使われてきた
- その重さと規模を反映し、最も高い生産量を示しているBがコンクリートであると判断できる
C:プラスティック
- アルミニウムより多く、コンクリートより少ない積算生産量(10~70億トン)
- プラスティックは軽量で耐久性が高いため大量に生産され、消費されている
- 大量に生産されているが軽量であるため、Cがプラスティックであると判断できる。
- AとBを特定できれば、消去法でCをプラスティックと判断することもできる。
講義:アルミニウム、コンクリート、プラスティックの特徴
アルミニウム
アルミニウムは軽量で加工しやすく、耐久性に優れた金属です。
特に航空機や自動車の素材として広く利用されています。
融点が低いため、少ないエネルギーで溶解が可能で、低コストでリサイクルできます。
アルミニウム工業
ボーキサイトからアルミナ(酸化アルミニウム)を生成し、これを電気分解することでアルミニウムを精錬します。
電気代が製造コストの8割を占めるため、安価な電力が確保できる地域に生産拠点が立地しやすく、大規模な水力発電が可能な地域や電力の安い国で生産が集中しています。
近年、中国が国内需要と安価な石炭火力発電を背景に世界生産量の約60%を占めています。
また、アラブ首長国連邦の生産量も急増しています。
アラブ首長国連邦は発電に必要な化石燃料を国内で産出できるため、発電コストの安さが強みとなっています。
原料であるボーキサイトはオーストラリアが世界の約3割を生産し、主要な供給源となっています。
コンクリート
コンクリートはビル、道路、ダム、橋、トンネルなどの建築・土木において欠かせない資材であり、砂や砂利をセメントで固めたものです。
セメント工業
石灰石や粘土を原料としてセメントを製造します。
セメント工業は、特に石灰岩が豊富な地域に立地しやすく、原料指向型の立地傾向があります。
生産過程で二酸化炭素が多量に排出されるため、環境負荷の高い産業とされています。
プラスティック
プラスティックは石油化学製品の一種で、石油や天然ガスから生成されるナフサが原料です。
熱や圧力を加えると変形する高分子化合物であり、電気を通さず、耐水性や耐腐食性に優れています。
軽量で耐久性に富むため、日用品(ペットボトル、ポリ袋など)から産業用原材料まで幅広く利用されています。
石油化学工業
石油化学製品の製造では、各部門が結びついたコンビナートが湾岸部に立地しやすく、原料の供給から製品の製造まで効率的に行われます。
主な生産地域はアメリカ、西ヨーロッパ、東アジアなどで、原料産地であるペルシャ湾岸地域でも盛んです。
環境問題
自然分解されにくい(生分解性がない)ため、廃棄されたプラスティックが長期間残存し、環境汚染の原因となります。
廃棄されたプラスティックは海流で拡散し、海洋汚染の原因となっています。
微細な粒子となったマイクロプラスティックが魚や鳥に摂取されることで生態系に影響を及ぼすリスクが高まっています。
プラスティックは石油を原料としており、製造および焼却時に二酸化炭素が発生して地球温暖化を促進します。
また、低温での焼却処理により有毒なダイオキシンが発生する可能性があるため高温での処理が求められます。
解答例
(4)Aーアルミニウム Bーコンクリート Cープラスティック
(5)
生産や焼却の過程で温室効果ガスが発生し地球温暖化を招く。自然分解されず海洋を汚染し、微細な破片が生態系に悪影響となる。
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