【東大地理2023】16世紀にどのような動物や植物がどのような過程で全地球的に広がったのか|第1問設問A(1)

東大地理2023第1問設問A(1)16世紀にどのような動物や植物が、どのような過程で全地球的に広がったのか 地理

2023年の東大地理第1問設問A(1)では、16世紀にどのような動物や植物がどのような過程で全地球的に広がったのかを具体的な動物と植物の例を1つずつあげて2行以内で説明する問題が出題されました。
この設問を解くには、大航海時代を背景とした国際的な交易や植民活動についての理解が求められます。

この記事では、次の重要なポイントについて詳しく解説します。

  • 16世紀の大航海時代における国際交易の活発化
  • ヨーロッパから新大陸に持ち込まれた動植物の例
  • 新大陸からヨーロッパに持ち込まれた動植物とその拡散

これらの内容を通じて、大航海時代がどのようにして動植物の地球規模での伝播を促進したのかを理解しましょう。

執 筆 者
諏訪孝明

東京大学経済学部卒
1浪・東大模試全てE判定・センター7割台の崖っぷちから世9割、日8割、数2割で文科Ⅱ類に合格。
これまでに1000人以上の受験生を指導。 
直近2年で偏差値70超の学校への合格率が90%を超えている。

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講義:大航海時代の国際交易と動植物の伝播

1:大航海時代の到来

大航海時代とは、15~17世紀にヨーロッパ人が大西洋を起点に新航路を開拓し、インドやアメリカ大陸に至るまで世界各地へ進出した時代です。
この時代は航海技術の進歩が大きな要因となって欧州を中心に国際交易が活発化し、西欧人の世界進出が急速に加速しました。

ヨーロッパ各国がこの時期に大規模な植民活動を展開したため、旧大陸(ユーラシア大陸)と新大陸(アメリカ大陸)との間で盛んな動植物、工業製品、病原菌のやりとりが行われました。
1492年のコロンブスによる西インド諸島到達はこの交流の始まりを象徴しています。
もっとも、これらのやりとりは必ずしも双方向的なものではありませんでした。
スペイン・ポルトガルなどによる征服と植民地化により、ヨーロッパ人主導で一方的に行われたものでした。

新旧大陸間の物質的交流が増えましたが、その背景にはヨーロッパ人による植民地化や市場化といった政治・経済面の侵略がありました。

2:旧大陸から新大陸に持ち込まれた動植物

旧大陸から新大陸へ持ち込まれた動植物はヨーロッパ人による植民活動を通じて広がり、新大陸の社会と生態系に大きな変革をもたらしました。
具体的には、小麦、大豆、さとうきび、コーヒー、バナナなどの植物が持ち込まれました。
これらの作物は新大陸での農業生産を活性化し、経済の発展を促進しました。
スペインやポルトガルの植民地支配により、新大陸では大土地所有制が導入されてさとうきびやコーヒーの大規模農園が形成されました。

また、動物では牛、馬、羊、鶏、豚などが導入されました。
牛は特に重要な役割を果たし、ラテンアメリカに持ち込まれたことで農業と社会構造に新たな基盤が築かれました。
牛は広大な牧場で粗放的に飼育され、食肉や乳製品、労役に用いられるようになり、農牧業の伝統が確立しました。

牛は世界中で飼育される主要な家畜であり、農業生産や経済活動において欠かせない存在です。
牛は降水量が比較的多い地域で飼育され、食肉用、乳用、労役用といったさまざまな目的で利用されています。
ラテンアメリカでは、この牛の導入とともに広範な農地を利用した農牧業が発展しました。

また、19世紀末に冷凍船の発明により南半球で生産された牛肉が北半球の市場にも供給されるようになり、畜産製品の国際貿易が活性化しました。

3:新大陸から旧大陸に持ち込まれた動植物

新大陸から旧大陸へ持ち込まれた動植物は、大航海時代の到来とともにヨーロッパに新たな食文化や農業資源を提供しました。
主な例として、とうもろこし、じゃがいも、キャッサバ、トマト、天然ゴム、たばこなどがあります。
これらは旧大陸での栽培が広まり、食生活や経済活動に大きな影響を与えました。

とうもろこしはラテンアメリカ原産で、メキシコからグアテマラにかけての熱帯アメリカ地域で発祥しました。
16世紀末にはその栽培の容易さから世界中に広がり、ヨーロッパやアジアで飼料や食料として重要な作物となりました。
現在はアメリカ合衆国と中国が世界の生産量の約60%を占めています。
特にアメリカでは家畜の飼料用として使用され、輸出も活発です。
中国では経済発展が進んでおり、食生活の向上にともなって肉類や乳製品の消費が拡大しています。
そのため、家畜頭数が増加しており、飼料としてのトウモロコシの需要が高まっています。
また、バイオエタノールの原料としても利用され、エネルギー分野においても注目されています。

じゃがいもはアンデス地方を原産とし、寒冷地や痩せた土地でも育つ特性を持っています。
16世紀にヨーロッパへと伝播し、特に北ヨーロッパで主食として定着しました。
じゃがいもは栄養価が高く、ヨーロッパの食糧事情を改善し、人口増加にも寄与したとされています。

キャッサバはブラジル南部が原産地で、熱帯地方で広く栽培される作物です。
キャッサバから製造されるデンプンは「タピオカ」として知られ、食用や飼料として使用されます。

天然ゴムはアマゾン川流域を原産地とし、高温多雨の環境で生育します。
東南アジアのタイ、インドネシア、マレーシアでは、その気候と豊富な労働力により生産が盛んです。
20世紀以降の自動車社会の到来により、ゴムはタイヤの原料として重要性が増しました。
一時は合成ゴムの影響で需要が減少しましたが、近年は中国の自動車生産の増加により再び天然ゴムの需要が増しています。

解答例

大航海時代以降、西欧人が世界各地へ進出して牛などを新大陸などに持ち込み、新大陸原産のとうもろこしなどを各地に広めた。
(58文字)

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