【東大地理2024】1990年代のアジアの大都市における地下鉄の建設|第3問設問B(3)(4)

東大地理2024第3問設問B(3)(4)1990年代以降のアジアの大都市における地下鉄の建設 地理

2024年の東大地理第3問設問B(3)(4)では、1990年代以降のアジアの大都市において、「地下鉄を建設する必要が生じた背景にある都市問題」と「地下鉄建設が可能になった主な要因2つ」を説明する問題が出題されました。

この記事では、次の重要なポイントについて詳しく解説します。

  • 新興国における都市への人口集中
  • 都市への人口集中により生じる都市公害
  • 新興国の都市におけるスラムの形成
  • 新興国の都市におけるインフラ整備

これらを学ぶことで新興国の都市・居住問題への理解を深めましょう。

執 筆 者
諏訪孝明

東京大学経済学部卒
1浪・東大模試全てE判定・センター7割台の崖っぷちから世9割、日8割、数2割で文科Ⅱ類に合格。
これまでに1000人以上の受験生を指導。 
直近2年で偏差値70超の学校への合格率が90%を超えている。

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講義:新興国の都市・居住問題

人口の都市への集中

アジアをはじめとする新興国では、グローバル化の進展により急速に都市化が進みました。
特に大都市の周辺には工業団地が建設され、先進国からの投資による工場や生産施設が次々と進出してきました。
これにより、輸出志向型の工業化が促進され、経済発展を加速させました。

都市への人口集中が生まれる背景には、賃金水準の上昇と豊富な雇用機会への期待が大きく関係しています。
農村部の余剰労働力が都市部へと流入し、都市の人口が急増しました。
この流れは、特に雇用機会や高賃金を求める人々が集中する首位都市(プライメートシティ)の形成を助長しました。

こうした都市には政治、経済、文化といった中枢的な機能が集中し、国内の他の地域との経済格差が拡大しました。この結果、都市部で過密化が進行し、社会インフラや公共サービスが需要に追いつかなくなるという課題が発生しました。

都市公害の深刻化

新興国の都市部では、急激な人口増加により様々な都市公害が深刻化しています。
都市の中心部に人々が集中し、過密状態が生じることで社会基盤の整備が追いつかず、都市問題が深まっています。

特に、自動車の急増によって交通渋滞が慢性化し、排出ガスによる大気汚染や騒音問題が顕著です。
これらの公害は住民の生活の質を低下させ、健康被害を引き起こす要因ともなっています。
また、急速な都市化に伴い地価の高騰も見られ、低所得層にとって適切な住居を確保することが難しくなっています。

さらに、上下水道の整備が不十分なために地下水利用が進み、これが地盤沈下を引き起こす一因となっています。
地盤沈下は洪水や高潮による浸水被害を助長し、都市の防災面での課題を浮き彫りにしています。

スラムの形成

新興国の急速な都市化は、都市部におけるスラム(不良住宅街)の形成を促しています。
これらのスラムは劣悪な居住環境であることが多く、衛生設備やインフラが不十分な地域として知られています。
スラムの住民の多くは農村部での貧困や就業機会の不足に耐えかね、より良い生活を求めて都市部へと移住してきた人々です。

こうした住民の多くは正規の雇用を得ることが難しく、路上での物売りや日雇い労働といったインフォーマルセクターに従事しています。
このため、収入は不安定であり、生活の基盤が脆弱です。

さらに、スラムには寝泊まりする家を持たないホームレスや路上で集団生活をするストリートチルドレンといった、都市の中でも特に厳しい状況に置かれた人々が含まれています。
これらの人々は教育や医療サービスにアクセスすることが難しく、社会的な支援の不足が深刻な問題となっています。
スラムの形成は都市の持続可能な発展において大きな課題であり、その改善には包括的な社会政策とインフラ整備が必要です。

インフラ整備

都市化に伴う急速な人口増加はアジアの新興国において深刻な交通渋滞を引き起こし、経済や住環境に多大な影響を与えています。
このような状況を打破するため、多くの都市では地下鉄などの公共交通機関の整備が進められました。
地下鉄や高架鉄道は都市内の移動を効率化し、慢性的な交通渋滞の解消に寄与します。
さらに、鉄道は自動車に比べて環境負荷が小さく、二酸化炭素の排出を抑えるため、持続可能な都市交通としても注目されています。

インフラ整備は交通機関に限らず、上下水道の敷設や電力の安定供給といった都市基盤全体の強化も含まれます。
これらの整備は市民生活の質を向上させ、都市の衛生環境を改善する役割を果たしています。
加えて、低所得者層向けの安価な住宅の提供も進められ、スラムの住民やホームレスがより安全で快適な生活を送れるよう支援が行われています。

地下鉄建設などのインフラ整備が可能になった背景

1:経済成長による資金の確保
アジアの新興国では工業化による経済成長が進み、各国が自国のインフラ整備に充てる資金を一部負担できるようになりました。
経済成長に伴い、都市は必要な高額な建設費用を捻出して地下鉄や交通網の建設などのインフラ整備に投資する余力を持つようになったのです。

2:外国からの開発援助と技術提供
ODA(政府開発援助)などの外国からの支援も、インフラ整備を可能にした重要な要因です。
特に、日本はアジア地域で積極的な対外援助を行い、経済面および技術面での協力を進めています。
こうした支援によって新興国は資金の提供を受け、高度な建設技術を導入することができました。
先進国の投資や技術援助により、都市の交通インフラ整備が一層促進されています。

解答例

(3)
自動車の増加で交通渋滞、大気汚染、騒音などが深刻化した。(28文字)
(4)
工業化による急速な経済成長で建設資金の一部を確保でき、日本などの先進国からODAなどの資金や技術の援助が盛んになった。(59文字)

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