2024年の東大地理第2問設問A(4)では、ヨーロッパとオーストラリアの標高500m以下の土地利用と土地被覆の特徴の相違とそれが生じた理由について2行(約60字)以内で説明する問題が出題されました。
この問題を解くには、ヨーロッパ、オーストラリアの気候条件とそれに応じた土地利用・被覆の基本的な理解が求められます。
この記事では、次のポイントについて詳しく解説します。
- ヨーロッパの気候と土地利用・土地被覆の特徴
- オーストラリアの気候と土地利用・土地被覆の特徴
ヨーロッパ、オーストラリアで気候がどのように土地利用や被覆の違いを生み出しているかを把握しましょう。
講義
土地利用と土地被覆について
土地利用
人間が特定の目的で土地をどのように活用しているかを指します。
土地利用には、作物栽培を目的とする農地、家畜の放牧を目的とする牧草地、居住を目的とする住宅地、工業生産を目的とする工業用地などが含まれます。
土地利用は地域の経済や生活様式、気候条件に強く影響を受けます。
土地被覆
その土地を物理的に覆っているものの種類を指し、土地の自然環境や利用形態によって異なります。
土地被覆には、人工物(建物や道路など)、草地(自然または放牧用の草地)、森林、砂漠、湖沼などが含まれます。土地被覆は気候や土壌、降水量などの自然環境と密接に関係しています。
ヨーロッパの土地利用・土地被覆の特徴
ヨーロッパの土地利用・被覆には、気候と地形が大きな影響を与えています。
以下の要点を理解しておきましょう。
気候の影響:温暖で湿潤な気候
ヨーロッパは、北大西洋海流と偏西風の影響で高緯度のわりに冬でも温暖で湿潤な気候が広がっています。
そのため、西岸海洋性気候と亜寒帯湿潤気候が主流です。
西岸海洋性気候や亜寒帯湿潤気候は降水量の年較差が小さく、年間を通じて安定した降水が見られます。
また、地中海周辺は地中海性気候となっています。
土地利用の特徴
①農地の割合が高い
湿潤な気候と標高200m未満の低地が多い地形条件から、ヨーロッパでは早くから農耕が発達してきました。
そのため、特に中・西ヨーロッパでは国土の5割以上が農地として利用されている国が多く、農地割合が大きな特徴となっています。
②森林の割合が高い地域もある
フィンランドやスウェーデンのような冷帯湿潤気候に属する地域では降水と冷涼な気候が相まって森林の割合が高く、国土面積の7割近くが森林に覆われています。
土地被覆の特徴
農地や森林に加えて都市や農村も広範囲に分布し、特に中世からの都市発展が進んでいる西ヨーロッパでは都市と農村が隣接する地域が多く見られます。
比較的安定した気候と広い平地の存在から、ヨーロッパの土地被覆は耕作地が多くを占めているのが特徴です。
オーストラリアの土地利用・土地被覆の特徴
オーストラリアの土地利用と被覆は、その気候条件や地形に強く影響されています。
気候の影響:乾燥帯が大部分を占める
オーストラリアの中央部を南回帰線が通過しており、ここから西部にかけて亜熱帯高圧帯(中緯度高圧帯)の影響が強く、国土の約7割が乾燥帯(砂漠気候・ステップ気候)に属しています。
亜熱帯高圧帯では空気が下降し、上昇気流が生じにくいため降水が少なくなるからです。
土地利用の特徴
乾燥地域は降水量が農耕に適さないため、乾燥地域が大部分を占めるオーストラリアの低地は農地として利用することが難しい土地が大半です。
そのため、羊や牛の放牧が盛んであり牧場や牧草地の割合が約45%に達しています。
土地被覆の特徴
乾燥地帯が広いため、土地被覆としては砂漠が多く、さらにその周辺には草原(ステップ)が広がっています。
植生が乏しい荒れ地も多く、特に内陸部や西部では乾燥した広大な土地が広がり、森林や耕地は限られています。
解答例
エは湿潤な気候の土地が多く森林が広がり農地が多く、オは乾燥した気候の土地が多く砂漠やステップが広がり牧草地利用が多い。
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