2024年の東大地理第2問設問A(1)では、「深海底が将来の世界経済に大きな影響を与えると考えられている理由」を2行(約90字)以内で述べる問題が出題されました。
この問題を解くには、深海底の海底資源に関する知識が必要です。
この記事では以下のことについて詳しく解説します。
- 海底資源の種類と重要性
- 海底資源開発の現状と課題
- 海底資源の将来展望と世界経済への影響
これらの知識を整理し、海底資源が重要視される理由をしっかり理解しておきましょう。
講義:海底資源
海底資源とは、海底に埋蔵されているエネルギー資源や鉱物資源のことです。
大きく分けると、次のような資源があります。
- エネルギー資源:石炭、石油、天然ガス、メタンハイドレートなど
- 鉱物資源:レアメタル(希少金属)、マンガン、銅、ニッケル、コバルトなど
これらの資源は、特に未開発の大陸棚や深海底に多く埋蔵されているとされます。
次に各資源の概要と、その経済的重要性について詳しく見ていきます。
主な海底資源とその特徴
レアメタル
レアアースなどのレアメタルは、将来の経済や先端産業において不可欠な資源です。
日本周辺の海域では、レアアースが豊富に含まれた鉱物層が確認されています。
現在、日本はレアメタルの多くを輸入に頼っているため海底資源の利用が進めば日本の自給率が向上する可能性があります。
マンガン団塊
マンガン団塊とは、水深4,000~6,000メートルの深海底に多く存在する金属の塊で、主にマンガン、銅、ニッケルなどの有用な金属を含んでいます。
太平洋などの深海底に広範に分布しており、エネルギー・鉱物の世界的な需要に応える可能性があります。
その一方で、深海底に埋蔵されているため開発コストが高く、技術開発が重要課題となっています。
メタンハイドレート
メタンハイドレートは低温・高圧の環境下でメタンが氷状に固まったものです。
日本近海の大陸棚に豊富に存在します。
これを新たな天然ガス資源として利用できれば、日本のエネルギー自給率が高まる可能性があります。
海底熱水鉱床
海底熱水鉱床は海底火山活動によって噴出する熱水に含まれる金や銀、鉛などの鉱物が沈殿して形成される鉱床です。
日本周辺には比較的浅い海底に分布する熱水鉱床が多く、将来的な開発が期待されています。
海底資源開発の現状と課題
深海底の資源は将来の産業や経済の成長に寄与する可能性が高いものの、現時点ではコストや技術面の課題から商業化には至っていません。
多くの資源が試掘段階にとどまっているのが現状です。
しかし、技術革新が進めば採掘が現実化し、資源価格や供給量に影響を与える可能性があります。
日本の経済水域内には豊富な鉱物資源が確認されており、将来的に自給率向上と安定確保を目指した開発が期待されています。
例えば南鳥島周辺ではレアアースが発見されており、技術革新が進むことでこれらの資源の利用が加速するでしょう。
将来の深海底資源開発が世界経済に与え得る影響
深海底の資源開発が進めば、次のような世界経済への影響が考えられます。
供給量の増加と価格への影響
海底資源が商業生産されることで供給量が増え、レアメタルや天然ガスなどの価格に安定化や低下といった影響を与える可能性があります。
供給国の多様化
海底資源の開発により従来の資源供給国に加えて新たな資源供給国が生まれ、特定国への依存が低減されることが期待されます。
これはエネルギー安全保障の観点でも大きな利点です。
環境・政治面での課題
開発が進む一方で、海洋環境への影響や資源をめぐる国際的な政治対立の懸念も増大します。
将来的な資源確保には環境保護と政治的安定が鍵となるでしょう。
解答例
鉱産資源が多く埋蔵しており、今後開発が進めば資源供給量が増えて資源価格に影響を与え、資源産出国の多様化も進むから。
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最後に
以上が、深海底が将来の世界経済に影響を与えると考えられる理由です。
資源開発の進展による経済的・政治的な変化を理解し、深海底資源の重要性をしっかりと捉えておきましょう。
深海底の資源の意義を整理し、海底開発の技術や経済への影響を把握することで大学入試の地理論述問題における海底資源に関する問題に対応できる力が身につくでしょう。