2024年の東大地理第1問設問B(3)では、地域ごとの天然ガス輸出・輸入におけるパイプライン輸送とLNG(液化天然ガス)輸送の量に関する問題が出題されました。
この問題に解答するためには天然ガスの輸送方法としてのパイプラインとLNGの特徴を理解し、図1-4に示される輸出入量のグラフを正確に読み取る力が求められます。
この記事では以下のことについて詳しく解説します。
- パイプラインによる天然ガスの輸出入
- LNG(液化天然ガス)による天然ガスの輸出入
これらの知識を整理し、天然ガスの輸送方法の特徴を理解しておきましょう。
資料の読み取り:図1-4
パイプラインによる天然ガスの輸出入
パイプラインは主に地続きの地域間において陸上を通るルートで大量の天然ガスを気体のまま輸送します。
イからイ、カからカへの域内輸出入の量が多いことから、地理的に近接した国々や同一地域内でパイプラインによる天然ガス輸送が行われていることが示唆されています。
エからカへの輸出はロシアからドイツなどヨーロッパ諸国へのパイプライン輸送が該当し、エを独立国家共同体(CIS)、カをヨーロッパと判断することができます。
LNG(液化天然ガス)による輸出入
LNGは天然ガスを-162℃で液化したもので、専用のLNGタンカーで海上輸送されます。
特に島国が多い地域で盛んです。
ウからウへの域内輸出に注目します。
オーストラリアやマレーシアなどから日本へのLNG輸送が盛んであるため、ウをアジア太平洋と判断できます。
講義:天然ガスの輸送方法
パイプライン輸送
・方法と特徴
パイプラインでは、天然ガスを気体のまま圧力で送ることで大量のガスを中長距離にわたり効率的かつ低コストで輸送できます。
・用途
広大な国土を持つ国や、国境を越えた隣接国間での輸送に適しています。
天然ガス資源が豊富な国では、国内や周辺諸国への輸送でパイプラインが広く利用されています。
・実例
ロシアは長大なパイプライン網を通じてヨーロッパ各国に天然ガスを供給しており、エネルギー供給において重要な役割を果たしています。
アメリカはカナダからの天然ガス輸入にパイプラインを利用しています。
LNG(液化天然ガス)による海上輸送
・方法と特徴
天然ガスは常温では気体ですが、-162℃まで冷却することで液体化し、体積が約600分の1まで縮小されます。
これによりLNGとしてLNGタンカーでの長距離海上輸送が可能となり、大量の天然ガスを低コストで運搬できます。
・用途
パイプラインの敷設が困難な島国や遠隔地向けに使用されます。
・実例
島国でありパイプラインの敷設が難しい日本はLNGの輸入を行っています。
その多くはアジア太平洋諸国や中東からのLNGタンカーによる海上輸送が占めています。
・その他
1970年代以降にLNGの技術が発達したことで天然ガスの国際取引が活発化し、消費量が急速に伸びました。
LNGタンカーで運ばれた天然ガスは消費地で再び気化されてから利用されています。
解答
アジア太平洋ーウ
独立国家共同体ーエ
ヨーロッパーカ