【東大地理2024】西アフリカ、アラビア半島から南アジアにかけての地域で乳糖耐性者の割合が高い理由|第1問設問A(2)

東大地理2024第1問設問A(2)西アフリカ、アラビア半島 から南アジアにかけての地域で乳糖耐性者の割合が高い理由 地理

2024年の東大地理第1問設問A(2)では、西アフリカ、アラビア半島から南アジアにかけての地域で乳糖耐性者の割合が高い理由について、指定語句「適応」「気候」「飲用」」を用いて2行(約60文字)以内で説明させる問題が出題されました。
この問題を解くためには、気候条件に適応した人々の生活様式を理解する必要があります。

この記事では以下のことについて解説します。

  • 乾燥帯の気候の特徴
  • 乾燥帯のうち砂漠気候で行われる農業
  • 乾燥帯のうちステップ気候で行われる農業

この記事を通じて乾燥帯で行われる農業について知識を整理し、記述・論述問題の対策に役立てましょう。

執 筆 者
諏訪孝明

東京大学経済学部卒
1浪・東大模試全てE判定・センター7割台の崖っぷちから世9割、日8割、数2割で文科Ⅱ類に合格。
これまでに1000人以上の受験生を指導。 
直近2年で偏差値70超の学校への合格率が90%を超えている。

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指定語句について

今回の問題では、「適応」「気候」「飲用」という指定語句を使って、乳糖耐性が高い地域の生活様式や気候への適応の背景を説明する必要があります。
それぞれの語句がどのように解答に使えるかを考えながら、適切な使い方を整理していきましょう。

適応

「適応」は地理的な文脈でよく使われる言葉で、特定の自然環境や気候条件に人々や生態系が適合していく過程を指します。
この問題においては、乾燥気候という厳しい環境に対する人々の生活様式の適応を説明する際に使います。

例えば、農耕が難しい乾燥地域では農業ではなく遊牧という形で生計を立てています。
この遊牧生活のなかで家畜の乳を飲用することが気候への適応の一つであったと解釈できます。
したがって、「乳糖耐性の獲得」自体が乾燥地帯の気候条件に適応していく過程の一環と捉えることができます。

気候

「気候」はこの問題で取り扱う地域(西アフリカ、アラビア半島、南アジアのうち乳糖耐性の高い地域)に共通する自然条件であり、乾燥気候(砂漠気候やステップ気候)が該当します。
降水量が非常に少ないこの気候では農耕による食料生産が困難であり、水が非常に貴重な資源となります。

この気候が乳糖耐性の発達にどのように影響したかを考える上で重要なのは、水や農産物の代わりに家畜の乳が重要な水分源や栄養源となったという点です。
気候の条件が飲料として乳を使用する生活様式を促進し、その結果として乳糖耐性が広がったと説明できます。

飲用

「飲用」は、家畜の乳を飲むことに関連しています。
乾燥地帯では降水量が少なく、水を直接確保するのが困難なため羊やヤギ、ラクダなどの家畜の乳を飲むことが水分補給の手段となっていました。
これは飲料水が乏しい環境での生存戦略の一つであり、習慣として長期間続くことで乳糖耐性が発達したと考えられます。

飲用とは「習慣的に何かを飲むこと」を指すため、乳を日常的に飲用することでその地域の人々が乳糖耐性を獲得していった経緯を説明する際に使えます。

講義:乾燥帯の気候と農業

乾燥帯の気候は、農耕に適さない厳しい環境が特徴です。
降水量が極めて少なく植物の生育が難しいため、農業の形態は限られています。
この地域では飲用水の確保が困難であり、人々は生活に適応するために特殊な農業や遊牧を行ってきました。
以下、砂漠気候とステップ気候に分けて解説します。

砂漠気候(BW)

  • 降水量が年間250mm未満と非常に少なく、年間を通して乾燥しています。
  • 気温の日較差・年較差が大きく、蒸発が盛んなため、土壌には塩類が集積しており、植物の育成が困難です。

こうした条件から、農業はほとんど不可能です。
ただし、例外的にオアシスや外来河川の水源がある地域では農業が行われています。
これをオアシス農業と呼びます。
オアシスではナツメヤシ、小麦、綿花などが灌漑によって集約的に栽培されています。

オアシス農業
湧き水や地下水、外来河川などの水を利用して行われる集約的な農業。
地下に水路を作り、水を蒸発させずに作物に供給します。
灌漑が不適切だと塩害が進行し、砂漠化が加速することがあります。
代表的な作物はナツメヤシ、小麦、綿花です。

ステップ気候(BS)

  • 砂漠気候の周辺に広がる気候で、降水量は砂漠気候より若干多く、短い雨季が存在します。
  • 雨季の間に、草丈の短い草原(ステップ)が生育しますが、農耕には不十分な水量です。 

こうした条件から、牧草を得ることができるため人々は家畜を飼育する遊牧を行っています。
遊牧では、水と草を求めて広い範囲を移動しながら羊、ヤギ、ラクダといった乾燥に強い家畜を飼育します。
遊牧民は家畜の乳や肉、毛皮、排泄物などを全て利用して生活しています。

家畜の耐乾性

  • 羊:乾燥や粗食に耐えられるため、乾燥地域で広く飼育されています。
  • ヤギ:羊と同様に耐乾性が高く、粗食に耐えられるため、乾燥地域で飼育されます。
  • ラクダ:西アジアや北アフリカの砂漠地帯では耐乾性が極めて強いラクダが重要な交通手段や荷物の運搬に使われ、乳や肉も利用されます。

講義まとめ

乾燥帯の気候では飲用水の確保が難しく、農業も非常に限定的です。
砂漠ではオアシスや外来河川沿いで集約的な農業が行われますが、ステップ気候の地域では主に遊牧が行われ、家畜の乳が重要な飲料や栄養源となっています。
乾燥地域に住む人々はこの過酷な環境に適応し、乳を利用する生活様式を発展させてきました。
この背景が、乳糖耐性が高い地域の形成に大きく関わっています。

解答例

乾燥気候でオアシス周辺以外農耕に適さないため、ステップで羊などの家畜を遊牧して乳を飲用できるよう適応していったから。
(58文字)

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