【東大日本史2024】東大寺再建に用いられた技術の特徴と歴史的背景|第2問設問A解説

東大日本史2024第2問設問A東大寺再建に用いられた技術の特徴とその背景 日本史

「東大寺再建に用いられた大仏様の特徴が知りたい」
「大仏様が用いられた背景にある日宋貿易について解説してほしい」
「東大寺の建立から再建までの歴史を整理したい」

東大の2024年日本史第2問設問Aでは、東大寺再建に用いられた技術の特徴について、その背景にふれながら2行(≒60字)で説明させる問題が出題されました。

そこで、この記事では主に以下のことについて解説します。

  • 日宋貿易
  • 東大寺の建立、焼失、再建の経緯
  • 東大寺の再建に用いられた建築様式である大仏様

東大寺再建に関連する記述問題や論述問題で使えるフレーズも多数紹介しています。是非最後までご覧ください。

執 筆 者
諏訪孝明

東京大学経済学部卒
1浪・東大模試全てE判定・センター7割台の崖っぷちから世9割、日8割、数2割で文科Ⅱ類に合格。
これまでに1000人以上の受験生を指導。 
直近2年で偏差値70超の学校への合格率が90%を超えている。

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講義

日宋貿易(平安時代中期~鎌倉時代中期・12世紀)

12世紀の日本と宋(南宋)のあいだで行われた貿易は、経済的・文化的に大きな影響を日本にもたらしました。
この時期、日本と宋の間では私貿易が盛んに行われ、日本からは硫黄、金、刀剣、材木などが輸出され、宋からは宋銭、絹織物、陶磁器、書籍などが輸入されました。

特に硫黄は宋で火薬の原料として重宝されました。
また、当時の朝廷は貨幣を鋳造していなかったため、日宋貿易を通じて輸入された宋銭が12世紀半ばには京や畿内で広く流通し、鎌倉時代には貨幣経済が都市だけでなく農村にも浸透しました

日宋貿易により禅僧や商人が民間商船で頻繁に往来したため、大陸文化が日本にもたらされました

東大寺

東大寺の建立(奈良時代・8世紀)

奈良時代に建てられた東大寺は天平文化を象徴する建築物です。

天平文化は国際色豊かな貴族文化です。
遣唐使や新羅との交流によって伝えられた盛唐文化の強い影響を受けています。
また、国家仏教の影響が強く、寺院を中心とした仏教文化が栄えました。

当時の東大寺建立の背景には政争や疫病、飢饉などの社会不安がありました。
王が仏教に帰依することによって国家が護持されるという鎮護国家思想の下、仏教を通じて国家の安定を図ろうとする意図で東大寺は建立されました。

東大寺の焼失(平安時代・12世紀後半)

平安時代末期、以仁王が平氏政権打倒を呼びかけたことにより、興福寺の僧兵が挙兵しました。
これに対し、平重衡が興福寺を攻撃し、結果的に興福寺や東大寺が焼き打ちされました(南都焼討)。
この事件で東大寺の堂塔伽藍のほとんどが焼失しました。

東大寺の再建(鎌倉時代・12世紀末)

興福寺は藤原氏の氏寺として摂関家の私財によって再建が進められました。
一方、東大寺は鎮護国家思想に基づいて朝廷が国家の安定を祈念して建立した寺であったため、再建に際しても国全体で社会的・宗教的な連帯感を醸成しながら国家的事業として進める必要がありました。
したがって、東大寺の再建には広範な人々からの支援と協力が求められました。

再建の責任者となったのは重源で、彼は勧進上人として寄付を集めました。
重源は後白河法皇や源頼朝から庶民に至るまで広く支援を募りました。

再建に際して、日宋貿易を背景に南宋から技術がもたらされました
宋の工人である陳和卿の協力を得て、大仏の鋳造が行われました。
また、重源は宋で学んだ「大仏様」という建築様式を取り入れました。
この建築様式は、雄大で豪放な力強い表現が特徴です。

東大寺南大門は、当時の再建の象徴として現在も残されています。

資料文の読み取り

資料文(1)

重源は、宋に渡った経験もあった

重源は宋に渡った経験があり、日本と宋の間では僧侶を含む人々の往来が盛んであったことが読み取れます。

資料文(3)

宋から来日していた商人を抜擢して成功させた

宋から来日していた商人を抜擢して東大寺の再建を成功させたことが記されています。
これにより、宋の建築様式や宋の工人の技術が東大寺再建に利用されたことが確認できます。
この抜擢が実現した背景には、日宋貿易によって商人の往来が活発であったことがあります。

大仏の鋳造/伽藍の造営

東大寺の再建において、大仏の鋳造と伽藍の造営が行われたことが資料から読み取れます。
資料(4)にも「仏像や伽藍を造営するように」との記述があるため、この点を答案に反映させることが重要です。

大仏様とよばれる建築技法

東大寺再建に際して、大仏様とよばれる建築技法が用いられたことが読み取れます。
この技法の採用は、東大寺再建における重要な要素です。

解答例

日宋貿易により技術者や僧の往来が盛んであったことを背景に、大仏の鋳造や伽藍の造営に南宋から伝来した技術が利用された。
(58字)

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